母の病をきっかけに医師の道へ。炎症性腸疾患の外科で研鑽を重ね、40年近く地域医療に貢献するクリニックを継承
はじめに、医師を志したきっかけをお聞かせください。

医師を志した原点は、幼い頃から病気がちだった母の存在でした。私が中学生の頃から胃がんをはじめ、いくつかの病気を患っていた母の姿を見て、「治せるものなら自分が治したい」と強く思いました。残念ながら母は私が研修医の時に亡くなり、当直中で最期を看取ることはできませんでしたが、病気の不安を抱える患者さんに寄り添い、力になりたいという思いは今も私の根幹にあります。
これまでのご経歴と、携わってこられた主な疾患や症例について教えてください。
兵庫医科大学に進学し、卒業後は同大学の第二外科(現・下部消化管外科)に入局しました。母が胃の病気を患っていた影響もあり、消化管の病気に興味を持ったのが専攻の理由です。その後、明和病院、兵庫医科大学篠山病院、鐘紡記念病院(現・神戸百年記念病院)などで外科医として経験を積み、2007年には兵庫医科大学病院へ戻り大学院に進学。炎症性腸疾患外科に所属し、潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患の外科を専門に多くの手術に携わりました。特に潰瘍性大腸炎に関しては全国的にも症例数が多く、救急の患者さんの緊急手術など、貴重な経験を積むことができました。
その後、西脇市立西脇病院に異動し、より地域に密着した幅広い外科診療を担当しました。肛門疾患や胆嚢炎・ヘルニアといった一般手術はもちろん、内視鏡検査による消化器系がんの発見・手術や、乳がんの検査や手術、外傷の処置や救急対応(災害派遣のDMAT隊員でした)まで、“何でも診る外科医”としての力を鍛えられた時期でした。
2022年からは大阪のくれはクリニックで内科や訪問診療も学び、幅広い分野で診療に従事してきたことで、外科と内科の両面から地域医療を支える力が身についたと思います。
外科医としてのキャリアから、開業を決意された背景にはどのようなきっかけがあったのでしょうか?
体力的にもハードな外科の現場で働くなかで、「これまで培ってきた消化器外科の経験を、地域の方のためにもっと身近な場で活かしたい」という思いが強くなりました。そんなとき、信頼する先輩医師に相談したことがきっかけで、当院の前身である「成山クリニック」が後継者を探していると知りました。ご縁を感じて継承を決意し、2025年10月に「まつおかクリニック」として開院するに至りました。
前院長の成山先生は40年近くこの地で地域医療に貢献されてきた方です。現在も毎週金曜日は診療を続けてくださっています。継承した大切な場所だからこそ、責任を持って受け継ぎながら、新しい医療の形を加えていきたいと考えています。
