曾祖母の看取りで感銘を受けた地元のかかりつけ医を理想像に、「患者さんも、家族も笑顔にしたい」と小児科クリニックを開業
はじめに、医師を志したきっかけをお聞かせください。
文系志望で医師という職業を思い描いたこともなかった私が医師をめざすようになったのは、中学生のときに「自宅で曾祖母を看取る」という経験をしたことが転機になったと思います。
心臓に持病があった曾祖母の具合がいよいよ悪くなったときに、「最期を病院で看取る」という話が身内で持ち上がりました。そのときに、私自身も子供の頃からお世話になっていた地元の小児科・内科の先生が、「少しでも長生きできるとは思うけど、おばあちゃんにとって幸せなのはどうだろう・・・自宅でご家族みんなに見守られて亡くなることじゃないかな。私が往診も看取りもするから。」と言ってくださったんです。
自宅をバリアフリーにして親族皆で協力しながら在宅介護をしました。真夏のある日、曾祖母は洋菓子店を営む私の父が作ったケーキを1個ぺろりと食べて、翌日眠るように亡くなりました。
「曾祖母は、自分の子供と孫、ひ孫たちに見守られて本当に幸せな最期だったんじゃないかな」「私たちも最期のときまで一緒に過ごせて良かった」と思ったときに、医師という職業は、患者さんだけでなく家族の心まで救える素晴らしい職業だと実感したんですね。「曾祖母に寄り添い、私たち家族をも最後まで支えてくださった先生のような人になりたい」と、医師を志すようになりました。
小児科医を選択した理由は何ですか?
医師をめざすきっかけが曾祖母の介護と看取りでしたので、最初は、高齢者医療にも関心がありました。学生時代は外科医に憧れ、中でも女性医師が求められる分野として乳腺や甲状腺などを扱う内分泌外科にも興味がありました。最終的に小児科医を選択したのは、2年間の卒後臨床研修の中で、小児科で接した子供たちの笑顔がとてもまぶしく、成長・発達に触れることに大きな喜びを感じられたからです。
それに、曾祖母を看取り、祖母、母、私と代々診てくださり、医師になるきっかけをつくってくれた地元かかりつけ医のように、私も、自分が診察したお子さんが成長して、将来、ご自分のお子さんを当院に連れてきてくださる…脈々と続く関係を築けたらとても嬉しいなと思ったんですね。医師を目指そうと決めたときに考えていた理想の医師像に近づけるかなという想いがあり、小児科医の道に進むことに決めました。
開業までの経緯をお聞かせください。
母校である東京女子医科大学での卒後臨床研修後、小児科に入局し、主に、小児神経難病やてんかんなどの小児神経疾患を担当し、研鑽を積みました。関連の市中病院やクリニックでは、発熱や風邪、腹痛、下痢、嘔吐といった一般的な小児疾患をはじめ小児救急にも携わりました。
中でも周産期医療に特化した病院では、乳幼児健診や予防接種、乳児期のスキンケア指導に関して多くを教わり、豊富な経験を得ることができました。また、開業までの約1年間、コロナ禍という特殊な状況の中、国立病院で子どもの心の診療に携わる機会にも恵まれ、短くも濃厚でとても良い経験を積ませていただきました。
2021年7月に開業されたそうですね。
いずれ開業したいという気持ちはあったものの、本当に当分先のことだなと思っていたんです。それが、就職活動の中で、医療法人社団元志会、宗理事長と出会い、ありがたいことにご縁があったこの柏の地で開業することができました。
私の出身は神奈川県平塚市で、「湘南ベルマーレ」というサッカーチームがあり、地域一丸となって応援していました。柏は「柏レイソル」があるという共通点に、とても親しみを感じています。
クリニックのある柏駅前は飲食店や商店街が多くにぎやかですし、柏市は、住みやすい町としての定評もあります。私も当院と一緒にこの地域に根差し、少しでも地域の方々の助けになるような存在になっていきたいと考えています。