幼い頃に憧れた医師の道をまっすぐ進み、移植、腎臓、免疫の分野で研鑽を積んだ後、「目の前で苦しむ患者を救うため」に開業を決意
はじめに、岩堀先生が医師を志したきっかけをお聞かせください。
幼稚園生の頃、足を骨折して入院したことがあったのですが、そのとき治療してくれた医師を見て「かっこいいな」と憧れたのがきっかけです。それからは、ずっと「医師になりたい」ではなく「医師になるんだ!」と思っていましたので、進路に迷うことはなかったですね。
川崎医科大学医学部に入学し、卒業後は東京大学の大学院に進みましたが、途中で東京医科大学に移籍し、そのまま同大学の八王子医療センターの腎臓科に入局しました。
腎臓を専門にされた理由や、主に診てこられた疾患について教えてください。
また、当時の腎臓科の部長が腎臓だけではなく、リウマチや膠原病を専門とされている先生でしたので、その影響で私もリウマチや膠原病など自己免疫疾患の診療に携わるようになりました。
八王子医療センターでは、腎不全や人工透析の患者さんを中心に、全身性エリテマトーデス(SLE)※3や、ANCA関連血管炎※4といった難病指定されている自己免疫疾患も幅広く診療し、研鑽を積みました。免疫疾患はもともと興味のある領域でしたので、膠原病に関する研究にも取り組み、学位を取得しています。
※3 全身の皮膚、血管、関節、臓器に炎症や組織障害が生じる慢性・炎症性の自己免疫疾患。膠原病のひとつ。
※4 血管に炎症が起こる血管炎の中でも抗好中球細胞質抗体(ANCA)が陽性となるタイプの血管炎。膠原病の一種。腎臓の機能が低下して透析治療が必要になるなど、内臓機能に障害が生じる場合もある。
その後、アメリカにも留学されたそうですが、どのような研究をされたのですか?
細胞免疫について学びを深めるため、スタンフォード大学医学部に留学しました。2年目からは「リサーチ・アソシエイト」というエンジニア兼研究職に就き、4年ほどアメリカで過ごしました。
帰国後は、幸有会記念病院に入職し、腎・免疫内科で腎臓病全般の診療にあたり、科長や血液浄化センター長、副院長も務めさせていただきました。2014年には、東京慈恵会医科大学や順天堂大学医学部で非常勤講師として後進の育成にも携わり、非常に多くの経験を積むことができたと思っています。
そして2015年9月に貴院を開業されました。開業を決意したきっかけは何だったのでしょうか?
20年以上働いてきて今後について考えたとき、腎臓疾患や膠原病の分野で診療・研究・教育に携わってきた経験や医療技術を、開業医の立場で地域の患者さんに役立てたいと思ったのが一番の理由です。
若い頃から研究や論文発表にも力を入れてきましたが、それらは不特定多数の人に向けて、広範囲に届けるために取り組んでいる感覚があったんです。もちろんそれも必要なことですが、年齢を重ねるにつれ「もっと目の前で苦しんでいる人のために、自分が貢献できることがあるはずだ」という思いが強くなり、開業を考えるようになりました。
故郷である大阪に戻ることも頭をよぎりましたが、医師として過ごしてきた千葉で、自分を頼って受診してくださる患者さんと長く向き合っていきたいという思いが勝り、2015年にこの地で開業しました。