患者さんを元気づける医師の姿に憧れ医療の道へ。臨床経験を通じ、治療と予防の重要性を実感
はじめに、先生が医師を志したきっかけをお聞かせください。
子どもの頃、親戚が入院すると母に付き添って病院によく行っていたんです。病気を患っている親族はどうしても気持ちが暗くなりがちでしたが、医師が病室を訪れて声をかけると、緊張が和らいで笑顔を見せることもありました。その変化を間近で見たとき、患者さんを励まし元気づけることができる医師という仕事に魅力を感じたのがきっかけです。また、医師になれば、家族や近しい人を自分で診ることができるのではないかという想いもありました。
九州大学医学部を卒業後は、地元の千葉に戻り、千葉大学医学部附属病院の呼吸器内科に入局しました。呼吸器内科を専門としたのは、いろいろな科を見てまわったなかで自分に合いそうだなと感じたことと、当時の呼吸器内科の医長に憧れたのが理由でしょうか。私も医長のような医師になれたらと思い、呼吸器内科を選びました。
大学病院ではどのような疾患を診てこられたのでしょうか?
肺がんと気管支喘息を多く診てきました。大学病院に入院する患者さんの半分以上は肺がんで、手術の適応がある方は外科での治療につなげ、呼吸器内科では抗がん剤などを用いた薬物療法を中心とした治療を行いました。そのほか、肺炎や肺結核などの呼吸器感染症、間質性肺炎(肺線維症)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)など、呼吸器疾患全般の診療に幅広くあたり、研鑽を積みました。
また、大学病院在籍中に大学院にも進み、p38という細胞伝達物質による疾患の解明や治療薬の開発などを行う研究室に所属し、肺特異的遺伝子改変マウスを用いた研究で学位を取得しています。その後、埼玉の病院に移り、健康診断などの診察業務に従事しました。
臨床から健診業務に異動されたのは、何か理由があったのでしょうか?
大学病院では、がんが進行して治療が困難な患者さんが数多くいらっしゃいました。治療技術が日々進歩しているとはいえ、やはり病気にならないのが一番ですし、もし病気になっても早期発見できれば治る確率は高くなります。そういった思いから予防医学に強い関心があり、健診業務に携わりました。
健診で異常を発見し、病気の芽を摘むことにやりがいを感じていましたが、なかには病気の早期発見ができても、自覚症状がないからと治療意欲が高まらない方もいらっしゃいました。医師は患者さんの病気を発見し治療をご提案することはできても、治療を強制することはできません。そうして治療が進まないまま病気が進行してしまうと、完治が困難になってしまったり、最終的には命を救えなくなることもあります。
医師として多くの方の健康を守るためには、予防も治療もどちらも重要なのだと痛感し、現在の診療につながるよい経験を積むことができたと思っています。
そして2015年、貴院を開業されました。どのような想いから開業を決意されたのでしょうか?
今お話ししたような経験から、予防と治療の両方を自身のクリニックで提供したいという想いが少しずつ大きくなっていました。そんなとき、この場所にあったクリニックが継承者を探していると知り、引き継ぐことを決めました。
継承といっても診療科目が違うので、ほぼ新規開業のような形ではあったのですが、私の地元でもあり、周辺には昔からの友人や知り合いも多くいます。生まれ育った場所で地域医療に貢献することができるのは願ってもないことと思い「あさひクリニック」としてスタートしました。