恩師の言葉に感銘を受け消化器内科の道へ。肝臓・消化器病・総合内科専門医として研鑽を積んだ後、先輩医師のクリニックを継承
はじめに、医師を志したきっかけをお聞かせください。
母方の祖父の姉がとても優秀で、東京女子医学専門学校(現・東京女子医科大学)に入学が決まっていたものの、若くして病気で亡くなってしまったそうなんです。祖父は私にその夢を託したかったようで、物心ついた頃から「医者になってくれ」と言われていました。
また、小学校高学年の頃に読んだ手塚治虫の「ブラック・ジャック」も影響していると思います。当時出ていた単行本はすべて揃えていましたし、連載されている週刊誌を古本屋で買って読むほど夢中になっていました。そんな少年時代を過ごす中で、いつの間にか「自分も医師になるんだ」という意識が芽生え、千葉大学医学部に入学しました。
消化器内科を専攻されたのはどのような理由だったのでしょうか?
※4 肝臓がんに対する局所療法のひとつで、高純度のエタノールを注入して腫瘍細胞を直接壊死させる治療
1991年に千葉大学を卒業された後のご経歴を教えてください。
千葉大学卒業後は附属病院の第一内科(現・消化器内科)に入局しました。まずは内科全般の診療経験を積んだ後、肝臓がん、肝硬変、B型肝炎、C型肝炎などの肝臓領域を中心に、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、食道がん、胃がんなど、あらゆる消化器疾患について幅広く研鑽を重ねました。
1999年から2年間はカナダのマニトバ大学に留学し、慢性肝炎を引き起こす新しいウイルスの探索と、肝細胞を正常な細胞のまま不死化できるかという研究に従事しました。留学を終え、帰国する直前の2001年9月10日にニューヨークを訪れていたのですが、その翌日にアメリカ同時多発テロ事件が起きました。ワールドトレードセンターにも訪れていたので、もし予定が狂って1日ずれていたらと思うとゾッとしましたね。「生かされた命を全うし、多くの人を救いたい」と改めて感じる体験となりました。
留学後は千葉大学医学部附属病院に戻り、最終的には国立病院機構千葉東病院で、消化器科医長を務めました。
その後、2013年にクリニックを継承するに至った経緯を伺えますか?
2012年の春頃、当院の前身である「まる内科クリニック」の前院長から「事情があってクリニックを誰かに継承してもらいたい」と相談を受けたんです。前院長は大学時代に同じ研究室に所属していた3年上の先輩で、昔からお互いよく知った間柄でした。
大学院や留学先で研究に従事した後、国立病院機構千葉東病院には9年間勤めてきましたので、次のステップとして「開業医として地域医療に貢献するいい機会かもしれない」と考え、「私が継承します」と二つ返事で引き受けました。後で妻に報告したら「そんな大事なことを軽々しく決めて」と、ものすごく怒られましたね(笑)。