地域に貢献する父の背中を追い、医師を志す。外来心臓リハビリの提供と病気の予防・早期治療をめざし開業
はじめに、先生が医師を志したきっかけを教えていただけますか?
父が歯科医師で、大津市で歯科医院を開院していました。幼い頃から父が診療する姿や、患者さんに喜ばれている姿を間近に見ているうちに、自然と「父のように人の役に立つ仕事に就きたい」と思うようになっていました。医師の道に進む気持ちが固まったのは、高校に進学してからです。兄が先に歯科に進んでいたので、私は違う領域を学ぼうと考え、滋賀医科大学医学部へ進学しました。
循環器内科を専攻されたのは、どういった理由からでしょうか?
もともとは整形外科に進もうと考えていました。その考えが変わったのは、滋賀医科大学医学部附属病院での初期研修で、循環器内科の2人の指導医と出会ったことがきっかけです。当時、その2人の指導医は40歳前後の経験豊富な医師でしたが、研修医と同じくらいの情熱と向上心を持って患者さんや治療に向き合っておられました。その医療に対する真摯な姿勢に触れ、「こんな医師になりたい」と感銘を受けました。
また、心疾患や血管疾患は適切な治療で急性期を乗り越えると、病状が飛躍的に改善することも期待できます。実際に、私が研修中に担当した患者さんが治療の甲斐あって劇的に回復される姿を目の当たりにし、大きなやりがいを感じたことも、循環器内科に進むことを決めた理由の一つです。
開業されるまでのご経歴をお聞かせください。
研修後は同病院の呼吸循環器内科(現・循環器内科)に入局し、急性心筋梗塞や狭心症といった心疾患に対するカテーテル治療や、心不全の緩和ケアなど、循環器領域の診療を幅広く経験し研鑽を積んできました。
当時広まりつつあった大動脈弁狭窄症に対するカテーテル治療(TAVI)では、立ち上げから携わり、最終的には責任者も務めました。また、医師・看護師・薬剤師・理学療法士などからなる心不全の多職種チームを立ち上げたりと、約15年間、忙しくも充実した日々を過ごしました。そのなかで、心臓リハビリテーションとチーム医療の重要性を実感したことが、現在にも繋がっています。
そして2023年12月に貴院を開業されました。どのような想いから開業を決心されたのでしょうか?
大学時代の友人でもあり、消化器内科を標榜する「南草津あおぞらクリニック」の院長でもある金井 俊平先生から、「一緒に地域医療に貢献しないか」と声を掛けられたのがきっかけです。地元で歯科医院を営む父を見てきたので、「自分もいつかは滋賀県の地域医療に貢献したい」という気持ちは常にありましたが、金井先生の誘いを機に意識するようになりました。
また、先ほど触れたように、「心臓リハビリテーションや栄養指導などのチーム医療を地域で継続的に提供できる環境を作りたい」という思いもありました。患者さんが心筋梗塞や心不全などの重篤な病気にかからないためには、何よりも予防が大切ですし、病気になった場合でも、治療後の再発を防ぐための二次予防が重要になります。その際に不可欠なのが、運動や食事、服薬のエキスパートによる多面的なサポートです。
入院中であれば病院の多職種チームなどがその役割を担いますが、退院後も継続してサポートが受けられるかというと、地域によってはその環境がまだ整っていないのが現状です。これから迎える超高齢化社会において、地域のクリニックがその役割を担う時代が来ていると考え、本格的な外来心臓リハビリテーションを行う施設として当院を開業することを決意しました。金井先生の「南草津あおぞらクリニック」に隣接し、同じ医療法人内で連携する形で、2023年12月に開業するに至ります。