寝たきりになった祖父への思いから医師の道へ。地域貢献と病気の予防・早期治療をめざし、地元・滋賀に開業
はじめに、先生が医師を志したきっかけをお聞かせください。
私が高校生の頃に、祖父が脳梗塞を発症して、寝たきりの状態になってしまったことがきっかけです。当時、私は滋賀県在住、祖父は九州在住と離れて暮らしておりましたが、とても残念でたまらない気持ちで、「祖父が寝たきりになる前に、何かできることはなかったのだろうか……」そう深く考えるようになったときに、医療者の道が頭に浮かんだのです。
「患者さんが寝たきりになったり亡くなったりする前に病気を予防したり、早期に発見して治療に繋げたりすることで、患者さんやそのご家族の生活を守る医師になりたい」と、大阪医科大学(現・大阪医科薬科大学)に進学し、卒業後は同大学附属病院の第三内科(循環器内科)に入局しました。
循環器内科を専攻されたのは、どういった理由からでしょうか?
循環器とは、血液が循環する器官のことで、すなわち心臓・血管が該当します。人は心臓がしっかり機能していないと生きていけませんし、心疾患や血管疾患でたとえ命が助かっても、後遺症が残り、病気になる以前のように自由に動けなくなったり、寝たきりになったりして、その後の生活に影響が出ることも少なくありません。あとあと話を聞くと、実は祖父も心臓や血管に問題を抱えていたことがわかり、循環器医療に携わることで、患者さんの生活を守るという想いを実現できるのではないかと考えたことが大きいですね。
大阪医科大学附属病院の第三内科での研修では、「目の前の患者さんが、自分の家族だったらどうするか。その思いを忘れずに患者さんと向き合うように」という、先輩方から代々受け継がれてきた教えを受け、日々診療にあたりました。とはいえ、大学を卒業したばかりの新米医師であった私は、診療というよりも患者さんや家族から教えられることの方が多く、貴重な経験をさせていただきました。
その後、同大学附属病院や関連病院の循環器内科に勤務して、不整脈、狭心症、心筋梗塞、弁膜症、心筋症、心不全などの心臓疾患、腎臓や血管系にかかわる疾患などの診療に数多く携わり、検査から治療まで研鑽を重ねてきました。
そして2020年9月に貴院を開業されました。どのような想いから開業を決心されたのでしょうか?
私が勤務していたのが地域の中核病院であったことから、患者さんの多くは、病状が重篤な状態で救急に搬送されてくる方々でした。治療の結果、お元気になられる方もたくさんいらっしゃいましたが、重症化してからでは、手を尽くして治療を行っても、寝たきりになってしまったり、ときには治療の甲斐なく亡くなってしまう方も少なくありませんでした。
そういう状況に直面するたびに、祖父に抱いたのと同様に「この患者さんをもっと早い段階で治療できていたら、この患者さんは今も健康で毎日を過ごし、その人らしく、ご自身のしたいことを存分にできる生活を送れたのではないか」と考えていました。そして、その想いが強くなり「私は、地域の医師として患者さんの近くに寄り添い、病気の予防や早期発見・早期治療に貢献する医療を提供していきたい」と、開業するに至ります。