電子楽器の開発者から医師に転身。基幹病院で研鑽を積んだ糖尿病・代謝内科、総合内科のエキスパートが、専門性と快適さを両立したクリニックを開業
はじめに、増渕先生が医師を志されたきっかけをお聞かせください。

私は医師になる前、民間企業で社会人としての経験を積んでいました。東北大学を卒業後、電子楽器の開発に携わり、技術者としてものづくりに励んでいたんです。仕事には大きなやりがいがありましたが、一方で「誰の役に立っているのか」が見えづらいという思いも抱いていました。
そんな折、親しい知人が病に倒れたことが転機となりました。もっと直接的に人の役に立ちたい、目の前の誰かを支える仕事がしたい──そう強く思うようになり、患者さんと向き合いながら健康を支える医師の道を志しました。
開業されるまでのご経歴を教えてください。
名古屋市立大学医学部を卒業後、同大学病院で初期臨床研修を受け、そのまま内科に入局しました。なかでも私が専門としたのは、糖尿病、高血圧、脂質異常症、甲状腺疾患などになります。
まず勤務したのは、大学の関連病院である知多厚生病院でした。地域の中核を担う同院では、救急を含め多様な疾患を診る機会が多く、私も専門分野に限らず、呼吸器・循環器・消化器など、幅広い内科診療に携わりました。
その後は、名古屋市東部医療センター、宇都宮済生会病院と勤務先を移しながら、糖尿病や高血圧、甲状腺疾患といった自身の専門領域を中心に、より深い診療経験を積んでまいりました。そして2017年11月、現在の場所にクリニックを開業し、地域の皆さんの健康を支える医療に取り組んでいます。
基幹病院で豊富なご経験を積まれた増渕先生ですが、開業にあたってはどのような医院を目指されたのでしょうか?
私が専門とする糖尿病や高血圧、脂質異常症といった生活習慣病は、命に関わる重大な病気を引き起こさないためにも、患者さんご自身が地道に治療を続けることが大切です。ところが、これらの疾患は特に40代〜60代の働き盛りの世代に多く、忙しさのあまり通院と仕事の両立が難しくなり、治療を中断してしまう方が少なくありません。
さらに、大学病院などの大きな医療機関では、診察までの待ち時間が長く、検査から診断、治療の開始までに何度も足を運ぶ必要があります。そのため、時間のない方にとっては、受診の優先度がどうしても下がってしまうのです。実際、基幹病院に勤務していた頃から、そうした「続けたくても続けられない」患者さんを多く診てきました。
問題の解決には利便性が高く、患者さんにとって通いやすい環境を整えながら、基幹病院と遜色のない専門的な医療を提供するクリニックを作ることだと考えました。立地調査、建物の基本設計、設備計画なども、自分で行いました。

患者さんの快適性や利便性について、どのような工夫をされていますか?
当院の大きな特長のひとつは、初診の方でもその日のうちにエコー検査や血液検査を受けられ、診断結果までお伝えできる体制を整えている点です。血液検査に関しては、病院と同等、あるいはそれ以上に詳細な項目を院内で迅速に分析できる設備を備えており、緊急性のあるケースには即座に治療を開始することも可能です。患者さんにとっては、検査結果を聞くために何度も通院する必要がないため、通いやすさや時間の効率の面でもご負担が少なくなっていると思います。
民間企業で働いていた経験から、お勤めの方の多くは、平日お休みを取りにくいことを実感しています。このため、土曜日、日曜日にも診察を行っています。半面どうしても土曜日に集中してしまい、お待たせすることが多くなってきていて、申し訳なく思っています。準備の関係で基本的には予約をお願いしていますが、ネット予約は、当日もお受けしています。これも、働いている方の利便性を考えてのことです。

また、検査結果が出るまでに少しお待ちいただく時間がどうしても生じますので、その時間を快適に過ごしていただけるよう、院内にカフェを併設していました。カフェでは管理栄養士監修の低糖質(ローカーボ)メニューをご用意し、血糖値が気になる糖尿病の患者さんにも安心してご利用いただける内容としていました。コロナ禍をきっかけに、閉店していますが、再開を目指しています。
さらに、診察の待ち時間もできる限りストレスを感じずにお過ごしいただけるよう、待合室は天井を高くし、ゆったりとした空間づくりを心がけました。患者さんが「また来たい」と思えるような快適な医療環境を目指しています。
開業から8年目を迎えられましたが、診療内容に変化はありましたか?
診療の柱は開業当初から変わっていません。糖尿病、高血圧、脂質異常症、甲状腺疾患といった生活習慣病を専門的に診療する一方で、総合内科専門医として内科全般に幅広く対応しています。また、西洋医学に加えて、漢方を取り入れた治療も行っています。
さらに、患者さんの運動習慣をサポートするため、院内カフェには鏡張りのスタジオを併設し、運動プログラムも実施していました。ただ、残念ながら、こちらもコロナ禍以降はスタジオの利用を一時休止しており、現在は再開のタイミングを検討しているところです。