大学病院で研鑽を積んだ血液内科のスペシャリストが、地域医療を支える父のクリニックを継承
はじめに、先生が医師を目指したきっかけをお聞かせください。

前院長である父が地域医療に尽力する姿を見て育つうちに、自然と医師という仕事に対する敬意や関心を抱いていたと思います。ただ、子どもの頃から「絶対に医師になる」と思っていたわけではなく、大学受験で浪人生だったときに真剣に考えるようになりました。将来について深く向き合う中で、「これまで積み重ねてきた努力を人の健康や命を守る仕事に活かしたい」と思うようになり、医師を目指すことを決意し、岩手医科大学医学部に進みました。
卒業後は同大学の血液腫瘍内科に入局されましたが、数ある診療科の中からなぜ血液腫瘍内科を専攻されたのでしょうか?
当初は父と同じ呼吸器内科を考えていましたが、大学在学中に血液腫瘍内科の診療現場に触れ、その厳しさと奥深さに惹かれました。当時の岩手医科大学の血液腫瘍内科では、「血液内科医である前に、まずは一般内科医であれ」という方針を掲げており、血液疾患のみならず患者さんが合併症などを抱えていれば、それらも含めて全人的に診る姿勢が求められました。決して楽な道ではありませんが、より広い視野と深い知識が必要とされ、医師として大きな成長が望めると感じ血液腫瘍内科を専攻しました。
また、同じく医師の姉から「血液内科は新しい治療法の開発が盛んで、医師として常に新鮮な気持ちで臨める分野」と助言を受けたことも、大きな後押しとなりました。
岩手医科大学附属病院や八戸赤十字病院で医業に邁進された間、主に診てこられた疾患や症例について教えてください。
白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、骨髄線維症などの造血器悪性腫瘍、いわゆる血液がんの患者さんを中心に、溶血性貧血や特発性血小板減少性紫斑病(ITP)など良性疾患を含む血液疾患全般を幅広く診療しました。
血液がんを患う患者さんの多くは、糖尿病や感染症といった他の内科的疾患を合併していることも少なくありません。先ほど触れた通り、岩手医科大学の血液腫瘍内科では合併症も含めて一貫して診る体制で、私自身も糖尿病、気管支喘息、肺炎、肺気腫など多様な疾患の診療にも携わりました。正直に言ってかなりハードな日々でしたが、結果として血液疾患にとどまらず、全身の疾患について知見を深め総合的な視点での診療経験を積むことができました。
また、岩手医科大学大学院に進学し、血小板に関する研究にも取り組みました。その成果が認められて「日本血液学会奨励賞」をいただいたことは、とても光栄で現在の診療にもつながる貴重な経験となりました。
貴院を継承された経緯や想いについてもお聞かせください。
血液内科での診療には大きなやりがいを感じており、特に移植をはじめとした血液がんの先進的治療について、もっと知見を深めていきたいという思いがありました。このまま勤務医として経験を積みたいと思う一方、父も高齢になっていましたし、長年にわたり地域医療を担ってきた当院の重要性を感じるようになり、2020年に当院へ入職しました。そして、父の急逝を受けて2022年に院長に就任しました。

