全身を診る歯科診療を学び、高度医療機関で研鑽を積む。地域の医師不足に貢献すべく、生まれ育った地で開業
はじめに、先生が医師を志したきっかけをお聞かせください。

中学生のとき、大病を患って1カ月ほど入院したことがありました。そのときの主治医の先生が、親身になって接してくれて、何かと励ましてもらいました。不安な気持ちでいっぱいだった私にとって、その存在はとても心強く、「自分もいつか、こんなふうに人の支えになれる医師になりたい」と思うようになりました。
また、小学生の頃に読んだ野口英世の伝記にも強く心を動かされました。困難な時代にあっても努力を重ね、医師として世界に貢献した姿に感銘を受けたのを今でもよく覚えています。
そうした原体験もあって、東北大学歯学部に進学しました。入学後、同大学の理念である「歯学も医学の一分野であり、人々の健康に資する重要な医療である」という教えのもと、医学と歯学を隔てることなく幅広い教育を受けるなかで、東北大学歯学部の教育理念「考える歯科医師であれ」の基礎を築きました。
開業されるまでのご経歴について教えてください。
大学卒業後は、国立栃木病院(現・栃木医療センター)に勤務しながら、東京医科歯科大学(現・東京科学大学)歯学部歯科保存学講座や、獨協医科大学の口腔外科での研修を重ねました。
診療では、歯科の二大疾患といわれるう蝕(虫歯)や歯周病などの歯科疾患をはじめ、親知らずの抜歯や顎関節症といった口腔外科領域の治療まで幅広く携わりました。また、外来診療だけでなく入院患者さんの診療も行いました。口腔の領域にも、舌や歯ぐきなどにできる良性腫瘍や口腔がん、糖尿病や心筋梗塞といった病気のリスクを高める歯周病などの重篤な疾患があります。耳鼻咽喉科や内科など他科と連携をとりながら、多様な症例に携わり研鑽を重ねました。
歯科といっても歯や口腔内だけでなく、全身の疾患にも関わるのですね。
私が学んだ東北大学歯学部には、「一口腔単位」という考え方があります。これは、問題のある歯を単体で診るのではなく、口腔全体をひとつの単位と考え、ひいては患者さんの全身を広く診るという歯科診療のあり方を表す言葉です。
歯周病の例からもわかるように、お口の健康は全身の健康に大きく関わっており、歯科医はただ「歯を治療すればそれでいい」というわけではありません。歯学部では、基本的な一般医学についても学びますし、私も「歯を診るのではなく人を診る」という姿勢を今に至るまでずっと大切にしています。
そして1978年に「渡辺歯科医院」を開業されました。どのような想いから開業を決心されたのでしょうか?
大きな病院での勤務は忙しくもやりがいのある日々でしたが、設備面などで自分の思い通りにいかないこともあり、徐々に自分が理想とする医療に邁進したい気持ちが強くなりました。加えて、当時は地域医療を担う歯科医師がまだまだ足りていませんでしたので、生まれ育ったこの地で開業し、地域の方々のお役に立ちたいと思い開業を決めました。
また、1981年には、高根沢町の宝積寺駅からほど近い場所に分院「渡辺歯科宝積寺診療所」を開設しました。この地域も当時は無歯科医村に近い医師不足で、地元の議会などから要望を受けて開設に至った経緯があります。現在は宇都宮本院と宝積寺診療所の両院合わせて4名の歯科医師が常駐し、連携をとりながら診療にあたっています。多くの有能なスタッフとともに患者様のご要望にお応えできる診療体制を整えております。

