人の役に立ちたいとの想いから医師を志す。循環器専門医として大学病院で研鑽を積んだ後、"人と人とをつなぐ"医療を目指しクリニックを開業
はじめに、先生が医師を志したきっかけと、循環器内科を専門とされた理由をお聞かせください。

祖父は開業医、父は大学病院の院長と教授を務め、医療が身近にある環境で育ちました。物心ついた頃から自然と医師を目指していましたが、中学、高校と進むにつれ「人々の健康を守り人生に寄り添う仕事がしたい」と強く思うようになっていました。「人の役に立ちたい」という気持ちが原動力となり、聖マリアンナ医科大学医学部に進みました。
循環器内科を専門としたのは“命をつなぐ”という側面に惹かれたのが理由です。心臓や血管などを扱う循環器内科は、患者さんがある日突然倒れて一分一秒を争う命の危機に瀕することも少なくありません。救急搬送から診断、治療に至るまでのダイナミックさと、医療がつながることによって命が助かる、その過程に携わりたいと思い専攻しました。また、循環器疾患は再発防止や二次予防も非常に重要なため、慢性期の患者さんにしっかりと関われる点も魅力のひとつでした。
聖マリアンナ医科大学循環器内科に入局後、主にどのような疾患に携わってこられたのでしょうか?
循環器疾患のなかでも、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患を中心に、軽症から重症例まで幅広く経験を積みました。2020年以降は、新型コロナウイルス感染症の流行で循環器内科にも大きな影響が出ました。高齢者社会で患者数が増加している心不全がパンデミックな状況になっていましたので、心不全治療に力を注ぎながら、心不全センターセンター長、手術・IVRセンター副センター長、集中治療センター副センター長などを務め、診療とともに研究や後進の育成にも携わりました。
日本とオランダで医学博士も取得されていますね。
聖マリアンナ医科大学では、診療の傍ら急性心筋梗塞と睡眠時無呼吸症候群の関連について研究し、学位を取得しました。2016年にはオランダのエラスムス大学に留学して、冠動脈疾患に関する治療と画像イメージングに関する研究に携わりました。どちらも臨床に直結した研究テーマですので、循環器疾患に関する知見をより深めることができました。
要職を務められていた先生が開業医に転身された理由を教えてください。
新型コロナウイルス感染症の拡大で窮地に追い込まれたことが、開業を考えるようになったきっかけです。医療を取り巻く状況が日々変わり、予測困難な中で私たち循環器内科医も奉仕と犠牲の精神で診療にあたりました。しかし、コロナ禍で孤立してしまう患者さんや、つながりを絶たれてしまう患者さんが非常に多かったんです。急性期治療はもちろん重要ですが、患者さんの孤立を防ぎ、人とつながり、生きがいを支えていく大切さをあらためて感じました。「身近な場所で患者さんに寄り添い、長く支えていく医療を提供したい」という想いで、2025年6月に「生田ハート内科クリニック」を開業しました。
