子どもの頃の私は体が弱く、たびたび風邪をひいては高熱を出していました。そんな日々の中で「なぜ人は病気になるのだろう」「免疫とはどう働いているのだろう」と、自然と人体の仕組みに興味を持つようになったのです。さらに高校時代、父が肺がんを患ったことをきっかけに、「病気で苦しむ人を助けたい」「自分が医師になって治療に携わりたい」という思いがいっそう強くなりました。これが、私が本格的に医師の道を志した原点です。

大学時代、私は免疫の仕組みや働きに強い関心を抱き、将来は免疫に関連した分野で専門性を深めたいと考えていました。なかでも、免疫機能の異常によって引き起こされる膠原病に関心をもち、研修では膠原病治療のエキスパートが多く集まる東京大学医学部附属病院を選びました。

研修医として多くの患者さんを担当するなかで、急性白血病や悪性リンパ腫といった血液疾患の治療に携わる機会がありました。重篤な状態にあった方が抗がん剤治療によって劇的に回復されていく姿を目の当たりにし、医学の力のすごさと血液内科の魅力に強く心を動かされました。「自分もこの領域で、患者さんの力になりたい」──そう感じたことが、血液内科を専門とする決定的なきっかけとなりました。

臨床の現場では、急性白血病を中心に、悪性リンパ腫や多発性骨髄腫といった血液疾患の患者さんの診療に数多く携わってきました。加えて、血液疾患に関する基礎・臨床研究にも取り組み、大学では医学部の学生や研修医の教育にも力を注ぎ、後進の育成に努めてきました。
なかでも急性白血病の治療においては、抗がん剤による積極的な化学療法が不可欠ですが、それに伴って免疫力が著しく低下し、肺炎などの重篤な感染症や、心不全・慢性腎不全といった合併症を引き起こすケースも少なくありません。そのため、治療の現場ではがんそのものだけでなく、合併症への迅速な対応・全身管理が重要となります。

私自身も、そうした背景から高血圧、脂質異常症、糖尿病、骨粗鬆症などの慢性疾患についても多くの臨床経験を重ねてきました。血液疾患を起点に、患者さんの全身を診る姿勢を常に意識しながら、診療と研鑽に取り組んできた日々です。

現在の医療体制では、大学病院などの高度医療機関で治療を受けた患者さんのうち、病状が安定した方については、地域のクリニックで経過を観察していく「地域完結型医療」が推進されています。しかし、血液内科は高度な専門性を要する分野であるため、治療後のフォローアップを地域で担うことが難しく、患者さんが継続的に大学病院へ通わざるを得ないというのが現状です。
そうした課題に対し、私が地域に血液疾患のフォローアップも可能なクリニックを構えることで、患者さんの通院負担を軽減できるのではないか。また、高度医療機関と地域医療機関が適切に役割を分担しながら連携することで、地域全体の医療の質向上にもつながるのではないか。そうした思いが、開業を考える大きなきっかけとなりました。

さらに私は、血液専門医であると同時に総合内科専門医として、長年にわたり全身に関わるさまざまな疾患を診てきました。これまでに培ってきた知識と技術を地域医療に還元し、内科全般を幅広くカバーする“かかりつけ医”として、地域の皆さんの健康を支えていきたいという強い思いもありました。もともとは定年後に開業することを考えていましたが、「今こそ、その役割を果たすときではないか」と思い至り、60歳という節目の年に「さがみひまわりクリニック」を開院することを決意しました。