周産期医療、婦人科疾患で研鑽を積んだ産婦人科医が生殖医療の専門家に転身。不妊治療・生殖補助医療専門クリニックを運営
はじめに、貝嶋先生が医師を志したきっかけと、産婦人科を専門とされた理由をお聞かせください。

私の母方の家系が代々産婦人科医なので、医療が身近にある環境に育つ中で、私も自然と医師を志しました。産婦人科を専門にしたのも、親族の影響が大きかったですね。実際、数多くの新しい命の誕生に立ち会うことができ、産婦人科医というのは、とても尊く意義のある仕事だと感じています。
貴院を開業されるまでのご経歴を教えてください。
島根医科大学医学部を卒業後、研修を経て日本赤十字社医療センターの産婦人科に勤務しました。そこで約10年間、周産期医療を中心に、婦人科がんをはじめとする婦人科疾患の診療に携わりました。命の誕生から女性の健康を支えるまで、非常にやりがいのある日々でしたが、その一方で激務が続き、心身ともに限界に近い状態になってしまった時期もありました。
ちょうどその頃、以前から関心を抱いていた不妊治療の分野に出会います。ご縁があり、当時の第一人者であった加藤レディスクリニックの加藤修先生(故人)のもとで学ぶ機会を得て、そのまま入職しました。以降の約10年間は、最先端の生殖医療・不妊治療の現場で多くの患者さんと向き合い、貴重な経験を重ねてきました。この時期の経験が、今の診療の基盤になっています。
2008年に「みなとみらい夢クリニック」を開業されています。開業に至った先生の想いをお聞かせください。

不妊治療には、大きく分けて、タイミング療法・人工授精など自然な妊娠に近い方法で妊娠を目指す「一般不妊治療」と、体外受精や顕微授精など、より高度な医療技術を用いる「生殖補助医療(ART)」があります。
勤務していた加藤レディスクリニックでは、当時から「低刺激法」と呼ばれる卵巣刺激法に注力していました。これは、排卵誘発剤の使用量を抑え、体への負担をできるだけ少なくする方法で、一般的な高刺激法に比べてより自然に近い形で排卵を促すのが特徴です。
しかし、患者さんの中には、排卵誘発剤が体質に合わない方や、卵巣機能の低下により薬剤を使用しても十分な卵子が得られない方もいらっしゃいます。そうした方々には、薬を使わずに自然の排卵周期に合わせて採卵を行う「自然周期法」が適しているケースも少なくありません。こうした患者さん一人ひとりの体質や希望に寄り添った治療を行いたいと考えたことが開業に至った大きな理由です。
この場所を選んだのは、もともと港町・横浜の雰囲気が好きで、いつかこの街で働きたいという憧れがありました(笑)。とはいえ、患者さんの通いやすさも重視しました。お仕事帰りやお買い物のついでに立ち寄りやすい環境を考え、みなとみらい駅に直結するビル内に開業しました。都心からのアクセスも良く、神奈川県内はもちろん、遠方からお越しくださる患者さんも多くいらっしゃいます。
現在は、どのような体制で運営されているのでしょうか?
現在は、私のほかに不妊治療を専門とする常勤医が5名、女性医師を含む非常勤医が5名、常勤の漢方内科医が1名、生殖補助医療に携わる胚培養士が13名在籍しており、医師・培養士・スタッフが連携しながら、患者さん一人ひとりに適切な治療を提供できるよう努めています。
開院以来、当院での治療により妊娠に至った方は、これまでに約12,000件にのぼります。こうした実績は、スタッフ全員が一丸となって患者さんの希望に寄り添い、日々研鑽を重ねてきた成果だと感じています。