「人の役に立ちたい」という志を貫き、大腸がん手術のエキスパートが内視鏡と内科・肛門外科のクリニックを開業
はじめに、医師を志したきっかけと外科を専攻された理由をお聞かせください。
中学・高校時代、カトリック系の学校で“人の役に立つ自分であることの大切さ”を学びました。「どうすれば人の役に立てるのだろうか」と考えていたときに、人の生と死に医療がどう関わるべきかを考える「生命倫理」や「終末期医療」の本に出会ったことで自分の進む道が見え、医師を志すようになりました。
外科を専攻したのは、患者さんの全身を診ることができる科目の一つだからです。中でも外科は、病気の診断から手術を中心とした治療まで幅広く携わります。しかも、特にがんなどの重篤な疾患の場合には、手術を受けても治療の甲斐なく亡くなる方も多い中で、お看取りを含めた終末期医療にも携わることになります。どの瞬間も精一杯手を尽くすことで、「人の役に立ちたい」という思いを叶えられるのではないかと考えました。
外科の中でも消化器外科を選択されたそうですね。
横浜市立大学医学部を卒業後、外科での臨床研修を経て消化器外科に所属しました。横浜市立大学附属病院など神奈川県内の基幹病院に19年間勤務する中で、主に大腸がんの治療に研鑽を積み、年間200〜250件の大腸がん手術に携わっていました。多忙な日々でしたが、検査から手術、お看取りまで、当初思い描いていた外科医の仕事に懸命に取り組んだことは、医師としてのかけがいのない土台になっていると実感しています。
2021年9月に開業されたそうですね。開業に至った経緯をお聞かせください。
勤務医時代、数多くの大腸がん手術に携わる日々の中で、元気になって退院されていく患者さんばかりではないという厳しい現実に直面しました。最近は、20代、30代の若い世代にも大腸がんが増えており、その中には、再発・転移を繰り返す方、手遅れで手術ができない方も少なくないのが現状です。小さなお子さんを抱えた若いお母さんや、結婚したばかりなのに子どもを持つ未来を絶たれ亡くなってしまう方々を目の当たりにする度に、「もっと早く発見できていれば手術で根治できたのに」と悔しさを噛み締めていました。
がんは、怖く、しつこい病気です。それでも大腸がんは、初期の状態なら9割以上が手術で治る可能性があります。命を奪ってしまうがんの怖さと、早期発見・早期治療の大切さを多くの方に知っていただくために外科医の自分にできることは、「開業医となって地域に根ざし、精度の高い、質の良い内視鏡検査と診断を提供していくことではないか」と考えるようになりました。
「少なくともこの地域では、大腸がんで苦しむ方をゼロにしたい」そう目標を掲げ、苦痛や見落としのない内視鏡検査を提供するために改めて技術を磨き、消化器内視鏡専門医※1の資格を取得して開業するに至ります。
※1 一般社団法人日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医