父の背中を追いかけ医学の道に進む。脳神経内科のエキスパートとして幅広い疾患の診療に携わった後、医院を継承
はじめに、先生が医師を志したきっかけをお聞かせください。

当院は、父が38年前に開業して以来、この地で長く地域医療に携わってきました。父の姿を見て育つうちに、私も自然と医師を目指すようになりました。また、開業医には定年がありませんので、生涯にわたって多くの方のお役に立つことができると思ったのも理由の一つです。
進路を決める際は、迷うことなく聖マリアンナ医科大学の医学部に進み、卒業後は研修を経て、同大学の脳神経内科学に入局しました。
さまざまな診療科がある中で、脳神経内科を専攻された理由を教えてください。
脳神経内科は、脳や脊髄、筋肉、神経などに起こる疾患を扱う診療科です。その対象は、脳梗塞や脳出血といった一刻を争う治療を行う急性期疾患から、認知症のように長期にわたり付き合っていく必要がある慢性期疾患、全身の筋肉が衰えていく筋萎縮性側索硬化症(ALS)や神経細胞の減少によって体が動かしにくくなるパーキンソン病といった難病まで多岐にわたるため、幅広い領域での対応が求められます。
さらに、病気の特性上、ご高齢の方や運動機能の低下から介護が必要になる方が多いので、脳神経内科医は治療だけでなく、リハビリや介護・福祉面でのサポートにも携わります。多職種と連携をとりながら、困難を抱える患者さんに長く深く関わっていくことができる点も魅力でした。
実際に脳神経内科の道に進んでみて、診療を通じて患者さんの生活を総合的にマネジメントし、支えていく医療に大きなやりがいを感じています。
大学病院では、どのような疾患を診てこられたのでしょうか?
先ほど挙げた脳梗塞や脳出血、認知症、筋萎縮性側索硬化症やパーキンソン病のほか、片頭痛やてんかん、脳炎や髄膜炎、ギランバレー症候群など、幅広い疾患の診療に携わりました。町田市民病院、横浜市西部病院など関連病院をまわって研鑽を重ねた後、2020年に開設したパーキンソン病治療センターの立ち上げに加わり、パーキンソン病や関連疾患の診療経験を積みました。
また、聖マリアンナ医科大学院にも進み、動脈硬化の研究に従事しました。動脈硬化は脳梗塞や脳出血をはじめ、心筋梗塞や腎不全など重大な病気を引き起こす原因になります。私は主に、首にある総頸動脈と脳に血液を送る内頸動脈の状態を評価することで全身の血管の動脈硬化の程度予測を行う研究に取り組み、学位を取得しました。
そして、2024年に「水上内科医院」を継承し、院長に就任されました。
代替わりについては前々から考えていましたが、長年にわたり当院へ通ってくださる患者さんもいらっしゃいますので、父から滞りなく診療を引き継ぐことができる時期をみて継承しました。父も健在でまだまだ働けますが、不測の事態で患者さんにご迷惑をおかけすることがあってはいけませんので、無事に地域医療のバトンを受け継ぐことができてほっとしています。
現在は、私がメインで診療を行い、父にはサポートをお願いしています。ここは私が生まれ育った場所でもあるので、今後も患者さん一人ひとりに寄り添い、地域医療に貢献していきたいと思っています。
