高度な技術と経験をもつ消化器外科のエキスパートが中心となり、鼠径ヘルニアや胆のう疾患の根治手術を提供する低侵襲治療部門を開設
はじめに、医師を志したきっかけと外科・消化器外科を専攻された理由をお聞かせください。
【大塚医師】我が家は医師の家系ですので、医療職のやりがいを身近に感じながら育ち、物心ついた頃には自然と医師を志していました。外科の中でも消化器外科を専門としたのは、もともと消化器疾患に興味があったことに加えて、外科医の守備範囲が広かったのも理由の一つです。私が医師になりたての20年ほど前は、現在は消化器内科医が行っている内視鏡や穿刺(内臓などに針を刺す)の処置などもすべて外科医が担当していました。手術だけでなく、さまざまな場面で患者さんの治療に携わることができるのにも魅力を感じ、消化器外科を専攻しました。
【三賀森医師】私は、中学1年生くらいのときに読んだ医療漫画の『ブラックジャック』に感化されたのがきっかけです。ブラックジャックのような鮮やかな外科手術に憧れ、その思いは一度も揺るがず、初志貫徹で外科医になりました。
医師になってからは、良性疾患から悪性疾患まで幅広い症例に携わる消化器外科を専門とし、特に肝胆膵(肝臓・胆道・膵臓)外科で、膵臓がんの手術を中心に研鑽を重ねてまいりました。肝胆膵領域のがんは、大掛かりな手術が多く、手術中の出血や術後合併症への対応なども多岐にわたるため、手術手技を磨くだけでなく、術前から術後の管理まで、診療全般に深く携わることができたと自負しております。
西宮敬愛会病院に入職されるまでのご経歴を教えてください。
【大塚医師】金沢大学医学部を卒業後、兵庫県立西宮病院で消化器外科の基本手技や周術期管理を学んだ後に大阪大学消化器外科に入局しました。その後、2014年にはアメリカのテキサス大学MDアンダーソンがんセンターに留学、大腸がんの転移や悪性度に関係する遺伝子の研究に取り組んできました。
帰国後は、大阪警察病院、近畿大学奈良病院に勤務し、大腸がんに対する腹腔鏡手術、ロボット手術、鼠径ヘルニアに対する腹腔鏡手術など、悪性疾患から良性疾患の治療まで数多くの経験を重ねてきました。
【三賀森医師】私は、弘前大学医学部を卒業後、大阪市立総合医療センターでの初期研修を経て、大阪医療センターや大阪府立成人病センターで外科研修を行いました。その後、大阪大学消化器外科に入局し、大学院では膵臓癌の研究を行いました。その後、約5年間在籍した大阪警察病院では、悪性疾患だけでなく、鼠径ヘルニアや腹壁ヘルニア、胆のう疾患などの良性疾患の手術、さらに救急患者さんの緊急手術も多く、さまざまな経験を積めたと思っています。その後は大阪国際がんセンターでがん診療を中心に行っていました。今回、大塚先生の構想をお聞きし、多くの患者さんに手術の恩恵を受けていただきたいと思い2023年に当院へ入職しました。
低侵襲知治療部門「COKU(コクウ)」は、どのような経緯から開設されたのでしょうか?
【大塚医師】当院は、2012年に医療療養型病床・回復期リハビリテーション病院として開設し、慢性期医療を提供してきました。当院がある阪神地域でも大病院の統合などによって医療体制が変わりつつあり、大きな総合病院ではどうしてもがん治療や救急疾患を優先せざるを得ず、良性疾患については十分な労力を割けないのが現状です。
このような医療環境のなかで、「外科的な良性疾患に対して質の高い医療提供を行い、患者さんが安心して治療を受けられる環境が必要である」と考え、鼠径ヘルニアや胆石症に伴う胆のう摘出術など、手術が必要な良性疾患に対して先進的医療を提供する低侵襲治療部門として、2023年11月に「COKU」を設立し、現在に至ります。
私も三賀森先生も、消化器外科専門医として、難易度の高いがんの手術から良性疾患の手術まで幅広く外科治療技術の鍛錬を重ねてきました。これまでに培ってきた知識と経験を活かし、良性疾患に対して手術治療を提供することで、患者さんや地域医療に貢献していきたいと考えています。