病弱だった幼少期を乗り越え、憧れの医師の道へ。幅広い臨床経験を積みプライマリ・ケアのエキスパートを志す
最初に、先生が医師を志したきっかけを教えてください。
実は、幼い頃の私はとても病弱だったんです。今の元気な姿からは想像がつかないとよく言われますが(笑)、そんな私を診てくれていた近所のお医者さんは、いつも笑顔で出迎えてくれ、こちらのつらい症状にもすぐに気がつき、テキパキと診察をしてお薬まで用意してくれる。まるで魔法使いのようでしたね。
そんな幼少期の医師への憧れが、青年期を迎えるころには、はっきりとした目標へと変わりました。「自分もいつか、他の誰かの健康を守れる存在になりたい」と思ったのが、医師を目指したきっかけであり、今でも私の原点になっています。
医師としての経歴もお願いします。
大学は奈良県立医科大学に進みました。大学での講座は呼吸器循環器で、卒業後は同大学附属病院の第二内科に入局し研修医生活を送ります。最初の2年間は大学内でしっかりと基礎を叩き込まれたあと、関連医療機関を回ることになり、その際に医師として非常に多くの経験を積むことができました。
実際に、勤務医時代はどのような症例を多く診てこられたのでしょうか?
本当にさまざまな症例に携わったので、多かったものはと聞かれると逆にお答えしづらいですが、私の専門はもともと呼吸器・感染症・血液などを扱う内科ですので、それらに関わる疾患を数多く診てきておりますし、嚥下障害の患者さんに胃ろうを導入したり、胃の内視鏡検査をしたりといった消化器内科医としての経験も豊富に積んできました。
また、規模の小さな地方の病院では、急患などがあれば専門外の患者さんも診ることになります。さまざまな症状を訴える患者さんを前にして「医師として何ができるか」「最善の治療とは何か」を自分に問い続けるような日々でしたね。充分な人や設備が整わない状況でも「患者さんの苦痛をどうにか取り除いてあげたい」という思いで、専門領域の垣根を越えて、あらゆる分野の医療を必死で学んだのを覚えています。こうした経験を積む中で、私の思い描く理想の医療の形は「プライマリ・ケア(身近にあって、何でも相談にのってくれる総合的な医療)の実践」だと感じるようになってきたんです。
プライマリ・ケアとは、特定の病気だけを診る専門医療とは違って、急に体の調子が悪くなったような緊急の場合の対応から健康診断の結果についての相談まで、身近にあって、何でも相談にのってくれる総合的な医療のことをいいます。医師として患者さんに向き合うとき、単に症状に対して適切な処置をするだけではなく、その患者さん一人ひとりに寄り添った医療サービスを提供すること、私はそのように考えています。
では、そうしたプライマリ・ケアの実現を目標に開院されたのですね。
その通りです。勤務医としてプライマリ・ケアの実践に取り組み始めた頃から、自らの理想とする医療の実現に向けて、クリニックの開業を意識していました。しかし、医者家系でもない私にとって、新規開業のハードルは高いのが現実で、すべてが順調だったわけではありません。幸いにも開業を模索し始めてから比較的早い段階でこの地でのご縁をいただき、2016年、「森川内科クリニック」を開業するに至ります。