「心と体をトータルに診療できる医師」を目標に医業に邁進。認知症診療、老年内科学、老年精神医学を専門に、患者と家族に寄り添うクリニックを開業
はじめに、医師を志したきっかけと認知症診療を専攻された理由について教えてください。

両親ともに医師で、子どもの頃から医療を身近に感じていたこともあり、自然と医師を目指すようになりました。藤田医科大学の医学部に入学後、これから社会の高齢化が進んでいくなかで「認知症」は大きなテーマになると考え、認知症について専門的に学ぼうと決意しました。私は両親が共働きで“おばあちゃん子”でしたので、祖母のような高齢者を診られる医師になりたいと思ったのも理由の一つです。
学生時代はさまざまな病院を見学しましたが、私が気になったのは、体と心の両方を診られる医師がほとんどいなかったことです。体は内科、心は精神科と分かれていて、一緒に相談できずに困っている患者さんを見て、「体も心も両方診られる医師になりたい」と思うようになりました。そんなとき、恩師の藤田医科大学病院精神科の岩田仲生教授が「認知症診療、精神科、内科も学べるようにサポートする」と私の希望を聞き入れてくださったのが、精神神経科に入局したきっかけです。同科には認知症を診る部門もあったので、まずは精神科からスタートしました。
どのような疾患を多く診てこられたのでしょうか?
高齢者の精神症状を診療する「老年精神医学」を専門の一つとして取り組んでいましたので、藤田医科大学病院では認知症の専門診療を中心に、うつ病やパニック障害、統合失調症などの精神疾患を幅広く診療しました。認知症については放射線科でMRIやCT、脳血流シンチグラフィーなど診断に関わる検査の画像読影を学ぶ機会も与えていただき、認知症の画像診断についても研鑽を積むことができました。
その後、桶狭間病院藤田こころケアセンターに異動し、認知症病棟で医長を務めました。患者さんの多くは高齢者ですので、認知症や精神疾患だけでなく、高血圧や糖尿病、心臓病などを併発されている方も少なくありません。そのため、精神症状・行動障害の治療と合わせて、生活習慣病や心不全・肺炎などの一般的な内科診療にも携わっていました。
内科の診療についても研鑽を積まれたのですね。
内科の経験を積むために、中部国際空港診療所の救急外来に週1回勤務して、内科医として日常的な疾患の診療にあたりました。藤田医科大学病院に戻った後は、精神科で認知症や精神疾患を専門に5年間講師を務め、2018年に新設された認知症・高齢診療科で、高齢者を診る老年内科の医師として講師を務めました。
認知症、老年内科学、老年精神医学のエキスパートとして数多くの患者を診療してきた松永先生が、開業を決めたきっかけを教えてください。
認知症の患者さんの療養生活を支えていくには、医師だけでは難しく、看護師や介護士、精神保健福祉士など、多職種の方々との連携が必要になります。しかし、大学病院のような大きな組織では細かい部分まで手が回らないことも多く、「もっと患者さんやご家族に身近なところで寄り添って支援していきたい」と思うようになり、開業を決意しました。ちょうどその頃、個人的にも働き方を変えたいと考えていたこともあり、2020年に「相生山ほのぼのメモリークリニック」を開院しました。

