高度医療機関で培った「質の高い医療」を提供するために開業
先生が医師を志したきっかけをお聞かせください。
医師になろうと決めたのは高校3年生のときです。ただ、今にして思うと、小学校5年生のときに事故で目に怪我を負い、入院して手術を受けたことがきっかけになっているのかもしれません。
治療を受けた藤田医科大学病院で、当時、日本にまだ3台しかなかったCTの検査など、最先端医療に触れて「将来、こんなふうに人の役に立つ仕事がしたいな」と思ったこと、そして、緑内障など根治が難しいといわれている目の病気で入院している同室の患者さん達が、悲壮感なく前向きに治療を受けている様子をみているうちに、「質の高い医療は、人に希望を与える」というのを子どもながらに感じていたことが、「医師になる」という決断につながったのだと思います。
消化器内科を専攻され、糖尿病の専門医資格もお持ちだそうですね。
消化器内科を専攻したのは、食道、大腸、胃という消化管と、付随する肝臓、膵臓などまで幅広く診療する科で、内視鏡検査をはじめ血管造影検査や腹部エコーなど、テクニックや深い知識が必要な検査が多く、若いときから経験を積めることが大きかったですね。自分の腕が日々上達していくのが目に見えてわかるので面白く、とてもやりがいを感じていました。
糖尿病専門医資格は、名古屋市立大学病院第一内科(現消化器・代謝内科)の膵臓グループに研究医として所属し、主に膵臓がんについて学んでいた経験から取得するに至ります。というのも、糖尿病は、膵臓の機能低下や病気によって発症することも多く、大学の医局で私が診ていた膵臓が悪い患者さんの中にも糖尿病の方が多かったんです。逆もまた同じで、糖尿病の患者さんは膵臓がんになりやすいといわれています。全国的に患者数が増えていることもあり、糖尿病についても専門知識が必要であると資格を取得し、研鑽を積んできました。
開業までの経緯をお聞かせください。
名古屋市立大学医学部を卒業後、刈谷総合病院で臨床と麻酔科の研修を終え、名古屋市立緑市民病院や名古屋市厚生院付属病院などの地域基幹病院に勤務し、主に消化器内科で診療していました。途中、大学に戻り、消化器代謝内科学や分子遺伝学を研究し、公立尾陽病院に勤務していたときに糖尿病専門医の資格を取りました。
開業を決めたのは、地域の人たちに近い場所で、高度医療機関で培った知識と経験を病気の治療だけでなく、予防に向けても活用し、実践したいと考えたからです。
大きな病院を受診するのは、すでにがんを発症していたり、糖尿病がかなり悪化して合併症を起こしていたり、非常に苦しい思いをされている患者さんが大半です。そうなる前に、もっと早い段階で発見し、患者さんに寄り添い、仮に病気を発症していても病状が軽い状態で長く過ごしてもらいたい。病院勤務の中でそうした思いが募り、2016年8月に私が生まれ育った名古屋市緑区に開業しました。