「受診のハードルを下げて、悩みを抱える女性の役に立ちたい」と泌尿器科医に
はじめに、医師を志したきっかけをお聞かせください。
私が医師になったのは、母の影響が大きかったと思います。私の両親はともに医師で、父が泌尿器科医、母が耳鼻科医をしています。私が物心ついた頃には、母はすでに開業していて、地域の患者さんを診ながら、子育ても、家事も完璧にこなしていました。
仕事は忙しかったと思うのですが、母にはよく遊んでもらいましたし、朝晩の食事もいつもちゃんと用意してくれて、お弁当まで作ってくれたんです。私を含めて3人の子育てをしながら開業医を続け、しかも手抜きもしない。「本当にすごい人だな」、「母のような人になりたいな」と憧れていました。両親から「医師になれ」と言われたことはなく、「なんにでもなっていいよ」と言ってくれていたのですが、「尊敬する母のようになりたい」と医師を志すようになりました。
泌尿器科を選択された理由は何ですか?
研修医の時に選択した泌尿器科がいちばん面白く、やりがいを感じられたんです。泌尿器科が扱う疾患というのは非常に幅広く、学ぶことが多いうえに、内科的な治療も外科的な治療も両方行います。他の科ですと、例えば、胃腸の病気を消化器内科で最初に診ても、手術が必要になると消化器外科に治療を引き継ぎます。心臓や脳の病気も同じように、手術が必要な場合は、内科から外科へと引き継ぐわけです。
その点、泌尿器科の病気は、診断から内科・外科の治療、手術後のフォローまで、全てを泌尿器科で担当します。手術が必要になっても他科にバトンタッチすることなく、一人の患者さんを最初から最後まで責任を持って診られることに、とても魅力を感じました。
女性の泌尿器科医は、まだ珍しいのでしょうか?
ここ最近はようやく増えてきたという印象がありますが、まだまだ男性医師が多いのが現状です。「泌尿器科の病気=男性の病気」というイメージをお持ちの方も多いようですが、実は、泌尿器科の患者さんの半数は女性です。例えば、出産後の尿漏れや頻尿、膀胱炎などの感染症、また急な尿意や頻尿を症状とする過活動膀胱は女性に多い泌尿器科の病気です。
泌尿器はデリケートな部分ですから、そもそも受診しづらいうえに、泌尿器科医のほとんどが男性医師なんですね。泌尿器科専門の女性医師がいることで、受診を躊躇される女性の患者さんのお役に立てるのではないかと考えたのも、私が泌尿器科医になったもう一つの理由です。
開業までのご経歴をお聞かせください。
兵庫医科大学医学部を卒業後は、順天堂大学医学部付属順天堂医院で2年間研修し、その後東京共済病院や順天堂大学静岡病院、順天堂東京江東高齢者医療センターなどで6年間経験を積みました。泌尿器のあらゆる疾患の治療に携わり、悪性腫瘍(がん)や前立腺肥大症や排尿障害の手術、尿路結石の内視鏡手術など、当時よく行われていた開腹手術も含めて、外科手術を学んできました。
母のように、私もいずれは地域医療に貢献していきたいと思っていましたので、2021年9月、泌尿器科がまだ少なかったこの埼玉県川口市内に、ご縁あって医療法人社団元志会の分院として開業しました。