患者さんのQOLを高め、結果が目に見える形成外科医の道へ
はじめに、先生が医師を志したきっかけを教えていただけますか?
実家が歯科の開業医だった影響もあり、もともと「人の助けとなることを実感できる医療の仕事に就きたい」と考えていました。私自身、子どもの頃に手術を受けた経験が多かったため、手術で人を助けることができる外科医に憧れを抱いており、医師というよりも外科医になりたいと思っていましたね。
形成外科を専門にされたのはなぜでしょうか。
医学部に入学した当初は、手術で命を救える心臓外科医や脳外科医になりたいと考えていました。ですが、学生時代の授業で、身体の他の部位から採取した組織を移植して、がんや怪我で失われた部分を再建する手術を見て、「こんなことができるのか」と衝撃を受けたのがきっかけで、形成外科に進むことを決めました。
形成外科は、体の表面に生じた形態や機能の異常を修復する診療科です。怪我の治療や皮膚のできものを切除する手術から、がんを切除した後の再建手術、まぶたや鼻などの美容整形手術まで多岐にわたり、その多くは患者さんのQOLにつながります。結果が目に見えるからこそやりがいを感じますし、患者さんを笑顔に導くことができる形成外科を選んで良かったと心から思っています。
開業されるまでのご経歴をお聞かせください。
日本大学医学部を卒業後、初期研修を経て、東京大学形成外科・美容外科に入局しました。最初に派遣されたのが埼玉医科大学形成外科・美容外科で、当初は1年間の派遣予定でしたが、自然豊かな環境にある埼玉医科大学は肌に合っており、良い上司や同僚に恵まれたこともあり、開業まで15年間にわたって勤務しました。
主に勤務した埼玉医科大学病院は、創傷治癒(キズの治り方)や創傷外科(キズやキズあとの手術)において国内トップの実績があり、形成外科の治療や手術の研鑽を重ねながら、数多くの論文執筆や学会講演を行いました。
また、埼玉医科大学国際医療センターでは、マイクロサージャリー(顕微鏡下手術)による組織移植を専門とし、頭頚部がんや乳がん切除後の再建手術に数多く携わりました。
大学での勤務を通して、臨床や研究、後進の育成も行いながら、数千件にのぼる手術実績を積み、形成外科専門医・領域指導医、レーザー分野指導医、再建・マイクロサージャリー分野指導医、創傷外科専門医の資格や、創傷外科の研究で医学博士を取得し、充実した日々を過ごすことができました。