スポーツドクターに「人生を救われた」経験から医師の道へ。すぐれた眼科医に"弟子入り"し、技術を学んで開業
はじめに、先生が医師を志したきっかけをお聞かせください。
子どもの頃に競泳を頑張っていて、実は、ジュニアオリンピックに出場したこともあるんです。オリンピック出場を目指して真剣に取り組む競技生活のなかで、あるスポーツドクターの先生の治療を受ける機会がありました。先生は、別の種目ではありますがオリンピック選手としての経験がある方で、医療面はもちろん精神的にも大きなサポートを受けたのです。
当時小学6年生でしたが、子どもながらに人生を救われたような気持ちを覚えた私は、「先生のような大人になり、私が受けたサポートを誰かに還していきたい」と考えるようになりました。この経験から医療の道を目指し、高校卒業後は東海大学医学部に進学、卒業後は東海大学医学部付属病院の眼科に入局しました。
さまざまな科があるなかで、どうして眼科を専門とされたのですか?
私は術野(目で見ることができる手術部位)の小さい手術に興味があり、眼球という20ミリほどの組織に対して手術を行う眼科に興味をもちました。医療のどの分野にもそれぞれの専門性がありますが、眼科領域は「眼科の医師でないとわからないことが多い」といわれるような高い専門性があります。その点にも関心がありました。
大きな決め手になったのは、白内障の手術を見学したことです。一般的な白内障の手術では濁った水晶体を取り除いて人工の眼内レンズを挿入するのですが、濁りで覆われていた目が手術を経て明らかにきれいになり、手術直後の患者さんが「視界がとても明るくなった」とおっしゃるのを見て、手術で救うことができる眼科治療に感銘を受けたのです。
付属病院では、網膜硝子体疾患である網膜剥離や糖尿病網膜症、目の中の血流の循環(眼循環)の障害などの治療に携わり、手術も多数担当して研鑽を重ねました。また、白内障やぶどう膜炎などの一般的な眼科疾患についても幅広く診療にあたりました。
そこから開業されるまでのご経歴を教えていただけますか?
付属病院での先端的な医療にやりがいを感じていましたが、出産を経て子どもを育てるにあたり、ひたすら医業に邁進してきた働き方を変える必要性を感じるようになりました。そこで開業しようと考えて付属病院を退局し、当院と同じ木更津市にあるロイヤルクリニックで、副院長として臨床経験を重ねました。
地域の方々を対象に眼科医療を提供するロイヤルクリニックでは、付属病院時代に比べて患者さんの疾患は広範にわたり、さまざまなお困りごとを抱えておられる方がいかに多いかということに改めて気づかされ、開業医として地域医療に貢献していく決意を新たにしました。
そんな日々のさなか、オキュロフェイシャルクリニックの鹿嶋友敬先生に出会いました。鹿嶋先生は、眼科領域のなかでもまぶたや眼窩(眼球の裏)など眼球の周囲の疾患を主に手術で治療する「眼形成」領域のプロフェッショナル。長年にわたり数多くの手術を手がけ、他院では治療が難しいような患者さんも治療されてきた医師です。ロイヤルクリニックでの診察の結果、より専門的な治療を必要とする患者さんをオキュロフェイシャルクリニックにご紹介することもあったのですが、治療を受けた患者さん方の喜ぶ姿はとても印象的でした。
そうした経験を通じ、鹿嶋先生の「苦しんでいる患者さんを救いたい」という切実な思いにふれるうちに、先生のように眼形成の領域で患者さんの支えになりたいと志すに至り、“弟子入り”を決意。オキュロフェイシャルクリニックの非常勤医として、眼瞼下垂の患者さんを中心に診療経験を積み、技術をしっかり習得した後、2024年2月に当院を開業しました。