産科では快適で安心できる環境が最優先。婦人科では患者さんに寄り添い、心身に負担の少ない医療を心がける
医院では日常的にどんな患者さんを診察されていますか?
患者さんの半数近くは妊娠・出産に関係する患者さんです。周産期診療から、分娩、新生児の健診など、一般的な産婦人科としての機能が整っていますので、特別な事情がなければ、妊娠中の患者さんには当院で出産していただけるように手配しています。患者さんの残りの2割は40代~50代の女性を中心に更年期の諸症状のご相談で、同じく2割程度が10代~20代などの若い方、月経痛や月経困難症などの治療に来られる患者さんといったところです。
ではまず産科の診療の特長を教えてください。
できるだけ自然分娩を心がけ、安全面に十分配慮し、快適で安心できる出産環境を整えていることが当院の自慢です。院内の穏やかな雰囲気、スタッフの優しい対応など、妊婦さんにはまるで家庭の延長のようにリラックスして過ごしていただけるよう気を配っています。
安全面に配慮とは、具体的にどういった対応をとられるのですか?
どんなに準備をしても絶対に100%安全とは言いきれないことが妊娠・出産の難しさです。いろいろな条件や状態によって予測していなかった結果になることもあります。だからこそ、日頃の妊婦健診の機会などを通じて、患者さんの既往歴や背景を把握し、想定されるリスクについてはできる限り早めの対策をとっていきます。
もしもリスクが高いと判断すれば、当院での出産には固執せず、対応できる設備の整った高次医療機関での診察・分娩をお勧めする場合もあります。また妊婦さんご自身も、妊娠・出産に伴うリスクを知っておくことはとても大切だと考えています。そのために当院では問診の時間を大切にし、なるべくわかりやすい言葉で、時間をかけて説明するよう心がけています。
出産前後のケアにはどのようなものがありますか?
生まれてきた赤ちゃんは、出産直後から約48時間は新生児室でお預かりし、その後お母さんのいる病室へお連れします。母乳の分泌を促進するためのマッサージやお手入れ、栄養・調乳・沐浴などの手ほどきも、入院中に助産師または看護師が行います。
当院で生まれた赤ちゃんは、新生児専門医による1か月健診を受けていただきます。さらに、定期的に母親教室も開催しています。お母さんが発育や子育てについて気軽に相談できるよう、母親教室は少人数の予約制にして、当院のアットホームな空気を大切にしています。
続いて、婦人科についても伺います。更年期障害の診察が多いとお聞きしました。
そうですね。更年期のお悩みの相談件数は年々増えています。更年期に入ったかどうかは、血液中の女性ホルモンの濃度を調べることによって簡単に判別できるのですが、自覚症状は個人差が大きく、ほてり・のぼせ・発汗・動悸といった軽いものから、不眠や鬱(うつ)のように精神的なストレスとも絡んでいるものまでさまざまです。
こうした症状は主にホルモンバランスを整えることで大きく改善します。ただし当院では、患者さんの身体への負担も考慮し、いきなり強い薬物治療を行うのではなく、まず漢方薬による治療を2~3か月試してみて、効果がなければ自律神経改善薬やホルモン補充療法(HRT)などに切り替えるようにしています。
また、女性ホルモンのエストロゲンはコレステロールや骨の形成にも関わることが知られており、閉経に伴う分泌量低下は生活習慣病や骨粗しょう症のリスクを高めてしまいます。当院では、そうしたリスクのある患者さんにも、適切な予防や治療、食事や運動の指導を行っています。
若い世代の患者さんには、どのような診療をしていますか?
10代~20代の患者さんでは、月経困難症や月経痛、生理不順などのご相談が主で、まれに性感染症の疑いのある受診もあります。それぞれ適切な診療をしますが、月経困難症や月経痛に関しては漢方療法の効果が高く、10代の患者さんなら約半数は漢方療法のみで症状が改善しています。
さらに、思春期特有のホルモンの乱れは、精神的ストレスと複合して過食症や拒食症へと結びつく場合もあります。心療内科への紹介を視野に入れるようなケースは少ないとはいえ、私自身も患者さんの悩みによく耳を傾け、なるべく気持ちに寄り添った診療を心がけています。