結婚・出産・子育て。医師人生を見つめなおしたとき、地域医療やプライマリ・ケアに尽力する父の姿勢に共感
小児科医として研鑽を積んでこられた先生が、「ファミリークリニック高井戸」に入られたのにはどういった想いがあったのでしょうか。
小児科の医師として経験を積む中でも、当初は「父を手伝う」とか「跡を継ぐ」といったことは意識せず「勤務医なのが当たり前」という感覚でいました。しかし、やはり私自身が家族と暮らし、子育ても経験する中で、少しずつ気持ちの変化がありました。
父は開業医として、外科医の専門性を発揮するだけでなく、地域で必要とされるさまざまな役割、つまり予防医療やプライマリ・ケアといった、より患者さんの近くに寄り添う医療にも軸足をおいていました。地域に欠かせない家庭医として、患者さんからも慕われる父の姿をあらためて見たとき「これからの医師人生を、父と同じ道に捧げるのもよい」と思えたんです。
そこで、そうした自分の気持ちを父に伝えたところ、父も快諾してくれ、このファミリークリニック高井戸での診察を手伝うことになりました。これが2018年のことで、それ以来、父と私の医師2人体制で、クリニックの運営にあたっています。
どのような患者さんが来院されていますか?
乳幼児から高齢者まで、あらゆる症状に幅広く対応できるのが、当クリニックの自慢です。父と私、それぞれの専門分野を活かした医療を提供することはもちろん、基本的には一般内科として、日常的な健康上の悩みを相談できる、いわゆる「かかりつけ医」としての働きを大切にしています。
一般内科は高血圧、高脂血症、糖尿病など生活習慣病の相談や、経鼻内視鏡での胃カメラ検査、超音波検査などの各種検査を希望される患者さんが多いですね。
小児科では発熱、せき、アレルギーといった診療のほか、乳幼児健診や予防接種にも対応しています。当クリニックでは患者さん同士の接触にも配慮し、小児科にはキッズスペースのついた専用の待合室を別に設けるなどの工夫をしています。
小児科の診療で注力していることはありますか?
現在のところ、乳幼児のスキンケアに関する相談がとても多いですね。食物アレルギーやアトピー性皮膚炎を皮切りに、成長につれて次々とアレルギー症状を発症してしまうことを「アレルギーマーチ」と呼びますが、近年の研究では、このアレルギーマーチの発症を抑えるための「乳幼児期のスキンケアの効果」に注目が集まっています。
どの程度の効果があるのかなどは今後も研究が進む分野だとは思いますが、そもそも「赤ちゃんのお肌のガサガサなどがとても心配になる」というお母さんの気持ちは、子育てを経験した者としてとてもよくわかります。ですので、医学的に有効な保湿の方法をアドバイスしたり、必要なアレルギー検査をすぐに行ったりと、親御さんの不安がなるべく早く取り除かれるような診療を心がけています。
ほかにも、私の専門領域の発達外来での相談を受けることもあります。子どもの発達障害や不登校などのお悩みで「どこに相談していいかわからない」「いきなり精神科を受診するのはちょっと…」といった保護者の相談にのり、専門的診療が必要なら、適切な医療機関や施設を紹介しています。
発達障害の診療というのはどういった流れで進むのでしょうか?
そうですね、症状も程度も様々ですし、ケースバイケースです。診断名が独り歩きしまっている昨今、本当にその診断が必要なのか否かも含めて、相談していく必要があると考えています。
ただし患者さんが社会生活を送る上で困難を感じるかもしれない、と判断すれば、診断と療育指導や今後に必要となるサポートなどの見通しをお話ししていくのが通例です。また、診断はつけずしばらく様子をみることになったとしても、一緒に暮らす家族にかかる負担なども考慮し、公的な支援や民間のサービスなどを紹介させていただくこともあります。
どのような場合でも、患者さんとその家族の不安なお気持ちを払拭できるように、わかりやすく「治療の道筋」を示すのが専門医としての役目だと思っています。