腎臓疾患に精通したエキスパートが、祖父の代から80年続く医院を継承し三代目院長に就任
はじめに、貴院の成り立ちを教えてください。

当院は、1943年に祖父が開院して以来、地域に根ざした医療を大切にしながら歩んでまいりました。2004年には父が二代目院長を継承し、糖尿病・内分泌内科を中心に診療を続けてきました。そして2025年5月より、私が三代目院長に就任し、現在は父と私の二診体制で診療を行っています。
先生が医師を目指したのは、やはりおじいさまやお父さまの影響でしょうか?
そうですね。幼い頃から、患者さんのために尽くす祖父や父の姿を間近で見て育ったことが大きなきっかけになっていると思います。自然と生き物や昆虫への興味も芽生え、小学校の卒業文集にはすでに「将来は医師になりたい」と書いていたことを、今でもはっきりと覚えています。
そのまま迷わず医師の道へ──と言いたいところですが、実は高校時代に競馬の騎手に惹かれ、医師になるか騎手になるかを本気で悩んだ時期もあります(笑)。最終的には、やはり幼い頃から抱いていた夢を貫こうと決意し、昭和大学(現・昭和医科大学)医学部に進学。卒業後は、同大学病院の腎臓内科に入局しました。
腎臓内科を専攻されたのはどういった理由からでしょうか?
「患者さんの全身を診る視点を養いたい」と思ったことが、腎臓内科を選んだ最大の理由です。腎臓は“全身の血管の鏡”ともいわれており、その機能や状態を診ることで、心臓や脳をはじめとする他臓器の血管の健康状態を推測することができます。
たとえば、蛋白尿は腎臓だけでなく、心臓や脳の血管障害の兆候としてあらわれることもあります。将来的に当院を継承し、地域に根ざした医療を担うためには、患者さんの全身を診る力が不可欠だと考え、腎臓内科を選びました。
これまでのご経歴と、携わってこられた主な疾患や症例について教えてください。
大学病院の腎臓内科では、慢性腎臓病(CKD)を中心に、腎機能低下の初期段階から透析が必要となる末期腎不全まで、幅広いステージの患者さんの診療に携わり、多くの臨床経験を積みました。
腎臓内科の魅力の一つは、内科でありながら外科的な手技も求められる点です。たとえば、血液透析に必要なシャント(血管の通り道)をつくる手術や、腹膜透析のためにカテーテルを挿入する処置なども行ってきました。これらの手術や介入技術は包括して「インターベンショナルネフロロジー」と呼ばれており、私も積極的に研修や勉強会に参加し、知識と技術の研鑽に努めてきました。小倉記念病院での充実した学外研修は、今でも忘れられない思い出として残っています。
大学病院での臨床経験を通じて、腎臓病の初期段階から腎移植後の管理に至るまで、腎疾患をトータルに診る視点と技術を習得できたことが、現在の診療の大きな基盤となっています。
貴院を継承される前は、埼友クリニックで院長を務めていたそうですね。
はい。継承を見据えて地域医療の現場で学びを深めたいと考え、2017年に埼友クリニックへ入職しました。ここは、地域に根ざしたクリニックでありながら、腎臓透析を中心に入院・外来・在宅医療を包括的に提供している施設で、腎臓透析専門医に加え、循環器・糖尿病・血液・救急の専門医も在籍しており、非常に学びの多い環境でした。
当初は1〜2年の勤務を予定していましたが、気がつけば8年間にわたり在籍し、その間に腎透析内科部長、そして院長という大きな役割も務めさせていただきました。一通りの経験を積むことができ、2025年5月、父が80歳、私が50歳という節目のタイミングで、加藤医院を継承するに至ります。

