消化器外科医として内視鏡治療に研鑽を重ね、理想の医療を実現するため開業医の道へ
はじめに、先生が医師を志したきっかけをお聞かせください。

月並みではありますが、「世のため、人のために尽くせる仕事がしたい」という想いから医師の道を志しました。東京慈恵会医科大学に進学し、臨床研修を経て、同大学附属第三病院の外科に入局しました。
先生は消化器外科医として、長年にわたり医業に邁進されました。開業するまでのご経歴と、主に診てこられた疾患を教えていただけますか?
その後は、東急病院や町田市民病院などで外科医として勤務を続け、胃がん・大腸がん・膵臓がんの手術をはじめ、胆石症の治療、さらには鼠径ヘルニアや痔の手術にも幅広く携わってきました。消化器外科専門医※1、外科専門医※2として、多くの疾患と向き合いながら、外科的な技術と知見を深めてきた日々だったと思います。
※1 日本消化器外科学会消化器外科専門医 ※2 日本外科学会外科専門医
2005年、「村井おなかクリニック(現・おなかクリニック)」を開業されました。開業に至った経緯と、その背景にあった想いをお聞かせください。
開業を考えるようになった大きなきっかけは、東京医科歯科大学大学院で受講した医療経営講座でした。医療機関の運営やマネジメント、品質管理といったテーマを学ぶ中で、「自分自身でクリニックを経営し、理想とする医療を実践したい」と強く思うようになったのです。
私が描いていた理想の一つは、「苦痛の少ない内視鏡検査」を提供することでした。当時は、内視鏡検査に対して“つらい”“苦しい”といったイメージが根強く、多くの方が検査をためらっていました。しかし、胃がんや大腸がんを早期に発見するうえで、内視鏡は非常に有効な手段です。だからこそ、専門医として培ってきた技術を活かし、鎮静の導入や手技の工夫によって、できるだけ負担の少ない検査を実現したいと考えました。そうした環境を整えることで、一人でも多くの方に安心して検査を受けていただきたいと思ったのです。
もう一つの柱が「日帰り手術」の導入でした。鼠径ヘルニアや下肢静脈瘤、痔などの手術は、以前は入院が当たり前とされていましたが、適切な術後管理を行えば、ご自宅での療養も十分可能です。むしろ、慣れた自宅でゆったりと過ごせることで、心身の回復がスムーズになるケースも多く見られます。こうした「苦痛の少ない内視鏡検査」と「身体的・心理的な負担の少ない治療」を両立できる場をつくりたい──その想いから、2005年に当クリニックを開業するに至りました。
現在、どのような患者さんが来院されていますか?
当院では、内科、消化器内科、肛門外科、消化器内視鏡内科・外科、外科を標榜し、幅広い診療に対応しています。その中でも特に多いのが、腹痛や下痢、便秘、胸やけなど、消化器症状を主訴とする患者さんで、全体の約半数を占めます。
次いで、高血圧や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病や、風邪・発熱などの一般内科的な症状で受診される方が約30%。そのほか、痔や肛門のかゆみ、出血など、おしりの症状を訴える方が約20%ほどいらっしゃいます。消化器疾患に特化した専門的な診療体制を整えながら、かかりつけ医として身近な体調不良や慢性疾患の管理にも幅広く対応しています。

