「患者を治したい」という強い思いで外科医に。大腸肛門病や泌尿器疾患で研鑽を積んだベテラン医が、性感染症内科専門のクリニックを運営
はじめに、内田先生が医師を志したきっかけと、外科を専攻された理由をお聞かせください。

もともとは工学部への進学を考えていたのですが、予備校時代に読んだ医療マンガ『ブラック・ジャック』に強く心を動かされ、「外科医になりたい」と思うようになったのがきっかけです。ベタな動機かもしれませんが(笑)、当時の自分にはとても響きました。
学生時代から医局に入るまで、一貫して外科医を目指しており、そこに迷いはありませんでした。外科の中では、胸部外科と一般外科のどちらに進むかで悩んだ時期もありましたが、「手術で患者さんを治したい」という気持ちはずっと変わらず持ち続けていました。
貴院を開業されるまでのご経歴を教えてください。
東京医科歯科大学(現・東京科学大学)を卒業後、同大学病院の第二外科(当時)に入局しました。第二外科では消化器や乳腺など幅広い分野を扱っており、私も大学病院や関連病院に赴任する中で、開腹手術から腹腔鏡下手術まで一通りの技術を身につける機会に恵まれました。
なかでも、癌研究会附属病院(現・がん研有明病院)では、食道・胃・大腸といった消化器がんの外科手術を中心に研鑽を積みました。また、東京都立墨東病院では、胆石症や虫垂炎、痔疾の手術に加え、救命センターにも所属し、救急搬送されてくる外傷患者の対応など、よりオールラウンドな臨床経験を重ねました。その後、東京都多摩がん検診センターに勤務した後、開業医となり、逗子大腸肛門センター内田医院の院長に就きました。
外科医としてご活躍されていた内田先生が、開業医へと転身された背景には、どのようなきっかけがあったのでしょうか?
もともと、将来的には開業医として地域医療に貢献したいという思いを持っていました。どんな医院をつくるべきか思いを巡らせていた時期に、ご縁があって「逗子大腸肛門センター」を引き継ぐことになったのがきっかけです。同院では、痔をはじめとする肛門疾患の手術を中心に、泌尿器疾患や消化器内視鏡検査などにも幅広く対応しながら診療を行っていました。約2年にわたって神奈川県逗子市で地域医療に携わった後、江東区に移転しました。
江東区に移転された後も、逗子での診療内容は引き継がれていたのですか?

はい。痔の日帰り手術や消化器内視鏡検査など、逗子時代と同様の診療体制を維持しながら診療を続けていました。加えて、現在のクリニックにもつながる取り組みとして、前立腺肥大症や前立腺がん、膀胱炎、性感染症など、泌尿器科疾患の診療にも力を入れていたのが特徴的だったと思います。
その後、診療体制を見直すべく、2013年、新橋駅前に性感染症内科に特化したクリニックを開業しました。クリニックの名称である「あおぞらクリニック」には、不安や悩みを抱えて来院される患者さんに、診察を終えたあとには青空のような晴れやかな気持ちで帰っていただきたい──そんな思いを込めています。
性感染症内科に特化したクリニックを開業されたのには、どのような理由があったのでしょうか?
一番の理由は、保険診療の制度では、性感染症に対して十分な対応が難しいと感じたことです。
たとえば、日本で最も感染者が多いとされるクラミジアは、性器だけでなく咽頭(のど)にも感染する可能性があります。しかし、保険診療では、同一月内に性器と咽頭の両方を同時に検査すると、原則として保険が適用されません。そのため、性器の検査で陽性と診断され、治療を受けても、咽頭に残っていた菌によって相手にうつして、自分の性器に再度感染し、後日また陽性反応が出るといった事態も起こり得ます。また、保険診療では「症状があること」が前提となっており、自覚症状がない方への検査は原則できません。しかし、性感染症の多くは無症状のまま進行することも多く、加えて「家族や周囲に知られたくない」といった患者さんのプライバシーへの配慮も求められます。
こうした課題に対して、自由診療であれば、症状の有無にかかわらず、必要な検査や治療を柔軟に提供することが可能です。患者さんの多様なニーズにしっかり応えるには、自由診療のほうが適していると判断し、性感染症内科に特化したクリニックを開業することにしました。