透析を受ける患者さんの快適さを追求した設備がクリニックの自慢。「透析はつらい」の常識を覆したい
クリニックにはどのような患者さんが訪れますか?
健康診断で腎機能の低下を疑われたり蛋白尿や血尿を指摘されて外来を受診される患者さんが多く、腎臓内科の患者数はひと月あたり200人~250人くらいでしょうか。さらに当クリニックで透析治療を受ける患者さんは90人ほどで、その大半の患者さんが週3回の長時間透析を受けています。
ではまず腎臓内科について詳しく聞かせてください。
腎臓内科の対象の疾患としては糸球体腎炎、ネフローゼ症候群、間質性腎炎、腎不全などがあります。こうした腎臓の病気の多くは自覚症状に乏しいまま進行しますので、検査で異常が見つかった場合は原因を精査する必要があります。当クリニックでは、千葉東病院、JCHO千葉病院とも密接に連携を取り、迅速な診断治療を行っていきます。
ところで、腎臓の障害(蛋白尿、血尿など)もしくは糸球体濾過量の減少が続いている状態を、慢性腎臓病(CKD)と呼びますが、現在、日本の成人人口の8人に1人にあたるおよそ1,330万人がCKDを罹患していると推計されているのはご存じでしょうか?CKDは放置すると心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患を高率に合併することが知られており、新たな国民病として警戒されています。さらにCKDが進行してしまうと腎臓の機能の大半が失われる「末期腎不全」に至るリスクがあります。
このCKDを含め、疑われる腎疾患を正確に診断し、適切な治療を行うことが腎臓内科医の役目です。一度失われた腎機能の回復は現代医学では難しいのが実状ですが、早期診断で治療を受け、患者さんご自身の生活習慣の改善などもあれば、重篤な症状へと進むのを遅らせることができます。当クリニックの腎臓内科でも、まずそうした予防的観点や保存療法を第一とする診療を行っています。
次に、クリニックでの人工透析についてもお聞かせください。
腎臓病が進行し、末期腎不全に至ると腎代替療法が必要になります。腎代替療法には「透析療法」と「腎移植」があり、当クリニックでは患者さんの病態に合わせてご提案しています。透析療法には透析器(ダイアライザー)を使う血液透析と患者さん自身の腹膜を使う腹膜透析があり、当クリニックではその両方に対応可能です。透析療法で血液透析を希望される場合はJCHO千葉病院等へ紹介し、シャント作製をしてもらった後に当院で透析を導入しています。そして、当クリニックで血液透析を受ける患者さんには、原則として長時間透析による治療をおすすめしています。腹膜透析を希望される場合は、千葉東病院で導入してもらった後、再度当院で治療を継続します。
腎移植を希望される場合は、千葉大学医学部附属病院等への紹介が可能です。透析を経ずに移植を行う先行的腎移植にも対応しています。
その長時間透析は貴院の特長でもありますね。もう少し詳しくお聞かせください。
通常の1回4時間程度の透析と比べて、長時間透析は数多くの優れた点があります。まず、生命予後のデータがよいことがあげられます。通常の透析では、降圧薬やリン、カリウムを下げる薬を多数服用したり、造血ホルモンをたくさん使用することが多いのですが、長時間透析では内服薬や造血ホルモンを減らすことが可能です。食事制限も緩和されるので、患者さんの栄養状態が良くなります。これらの要素によって血液透析の合併症リスクが下がり、良好な生存率につながっていると考えられています。
次に、透析中または透析直後において「不均衡症候群」と呼ばれる腹痛や吐き気を伴う不快な症状が出にくい利点もあげられます。除水による急激な体液変動などが原因で生じるこれら症状は透析の副作用とされ、通常の透析を受ける患者さんは副作用に苦しむ方も多いのです。しかし、通常の透析よりゆっくり時間をかけて除水する長時間透析では、こうした症状が出にくく、体内の尿毒素も十分に排出することができるため、透析中や透析後の時間を「つらい」と感じる患者さんの割合が大きく減ります。
さらに、透析を受ける患者さん特有の皮膚のかゆみ、色素沈着といった症状も大きく軽減されるなどの利点もあります。実際に当クリニックで長時間透析を受け始めた患者さんの感想を聞くと「肉体的・精神的ストレスから解放され、むしろ透析の時間が楽しみになった」と答える方もいらっしゃいます。
もちろん、末期腎不全の患者さんに対して、長時間透析が究極や万能の治療法というわけではありません。それでも「つらい」とされることの多い透析治療のイメージを変え、患者さんの前向きな社会復帰に役立つのなら、全力で取り組む価値のある治療法だと思っています。
クリニックで、設備面のこだわりはありますか?
何といってもやはり、長時間の透析治療を快適に受けていただける治療環境こそ、当クリニックの自慢で、日常生活の延長として充実した時間になるようにさまざまな工夫をしています。
たとえば、透析治療はよくあるベッド上ではなく、座り心地抜群のリクライニングチェアで受けていただきます。患者さんは、上着を脱ぎ、腕まくりをして好きな姿勢で座るだけ。チェアを倒して寝るもよし、無料のビデオオンデマンドなどを楽しむもよし、食事をとることだってできます。もちろんWi-Fi環境も整っていますので、パソコンを使うこともできますし、実際に透析を受けながら仕事をされる患者さんもいらっしゃいます。
透析にはJMS社の最新鋭の全自動透析監視装置を導入しており、グリーン情報システムズ社の透析支援システムと合わせて、スタッフは効率的な業務が可能で、ヒューマンエラーの発生を極力抑える工夫もしています。その他、直接肌に風が当たらない輻射式の冷暖房装置の導入、極めてクリーンなRO水(透析用の水)生成装置の導入など、快適さと安全性にこだわっています。
さらに、災害時などの停電に備え、プロパンガス発電機を設置しました。これにより非常時でも安全な透析治療を続けることが可能となっています。