患者さんやご家族の気持ちに寄り添った診療で、地域に根づく“かかりつけ医”に
日々の診療で心がけていることを教えてください。
大切にしているのは、「患者さんの立場に立った診療」そして、「患者さんに寄り添った診療」を行うことです。
「病気を診ずして病人を診よ」という慈恵会医科大学の建学の精神があり、医学生の頃から患者さんの側に立った全人的な医療の実践を信念としてきました。
それを確固たるものにしたのには、私の家族が病気になったという背景があります。子供が2歳のときに急性脳症を患って生死の境をさまよい、さらに、その翌年には、父が24時間の介護が必要な難病ALSを発症してしまったんです。
当時、とても不安だった私に、担当医師や看護師さんがとても親身になって寄り添ってくださり、夜通し懸命に治療に取り組んでいらっしゃる姿に、私の不安な気持ちは和らいでいきました。父は残念ながら亡くなりましたが、子供は幸い回復し今はもう大学生です。
この自分自身が患者の家族になるという体験を通して、「患者さんやそのご家族のお気持ちに寄り添った診療を実践する」というのは、ものすごく大切なことであると身に染みたんです。
また、患者さんに寄り添った医療を実践しようと考えたときに、インフォームドコンセント(説明に対する納得と同意)は、とても重要だと思っています。
そこで、「診療の見える化」として、診療室に大型スクリーンを設置し、普段ご自分で見ることができない耳や鼻、のどの内部やめまい症の眼振をスクリーンに映してご一緒にご覧いただきながら、今の患者さんの状態がどうなっているのか、どういう治療が必要なのかを丁寧に説明することで、ご自分の病態への理解と治療内容についての理解を深めていただくようにしています。
自分が医療を受ける側になったときに、どんな診療や対応を望むのかということを常にイメージすることが大切で、それを日々実践しながら診療することを心がけています。
お忙しい日々だと思いますが、休日は、どのようにお過ごしでしょうか?
二人の子供が小さい頃は子供達と遊ぶのが楽しみでした。でも、いまや二人とも大学生ですから、もはや相手にしてくれません(笑)。たまに、映画に一緒に行ってくれるくらいですね。コロナ禍で外出するのもなんだからと、昔観ていた懐かしい映画を自宅で鑑賞しているのですが、家族から「運動したら?」と言われて(笑)。たまに、近くのプールへ泳ぎに行っています。
さいごに、今後の展望や読者へのメッセージをお願いいたします。
いま通院されている若い患者さんが、やがてお子さんを連れて来院されるような、ご家族何代にもわたってかかりつけ医になれるような存在になりたい、というのが私の今の願いです。そのくらい地域に根づくことができれば、開業医冥利に尽きますね。
その意味では、かかりつけ医の使命の一つは、重症化の予防だと思っていますので、これからも早めの診断と適切な治療を実践し、大学病院で培った専門的な医療についても、当院内でできるものは可能な限り提供させていただきます。そして、それ以上に専門的な精査や治療が必要な病態の患者さんについては、その見極めを迅速に行い、スムーズに大学病院などの高度医療機関に紹介するという医療連携の窓口としての機能も十分に果たしていきたいと考えています。
「こんな程度の症状で病院に行っていいのか」と受診をためらわず、「鼻詰まりを吸引してもらおう」とか、「耳垢を取ってもらいたい」というようなちょっとしたことでも遠慮せず気軽に受診してください。スタッフ一同お待ちしています。