医師と住職の仕事を両立して心身の苦しみに寄り添い、生まれ育った地域に貢献したいとの想いから開業
はじめに、先生が医師を志したきっかけをお聞かせください。

幼いころ、私は喘息を患っており、発作の苦しさに何度も悩まされました。病気のつらさは、なかなか周囲に理解してもらえないことも多く、身体だけでなく心も傷つくことがありました。そうした経験を通して、「病気で苦しむ人の気持ちを理解し、その心に寄り添える医師になりたい」と強く思うようになったのです。
ただ私の家は、この北越谷にある浄光寺という寺の住職を代々務めており、私自身もその跡を継ぐことが望まれていました。ですので、まずは学習院大学の文学部心理学科、大正大学の人間学部仏教学科(当時)で学び、僧侶の資格を取得したうえで、岩手医科大学の医学部へ進学しました。
医学部卒業後は、研修を経て順天堂大学の消化器内科に入局されました。どのような理由から消化器内科を選ばれたのでしょうか?
消化器内科は、胃や食道、小腸・大腸、肝臓、胆のう、膵臓など、体の中でも大きな役割を担う臓器を幅広く診る診療科です。疾患の種類が多く、内視鏡検査・治療や超音波(エコー)検査など、さまざまな手技を駆使しながら診療を行う点が特徴です。
こうした幅広い領域に携わりながら、検査から診断、治療、経過観察まで一貫して患者さんと向き合えることに大きなやりがいを感じました。
順天堂大学医学部附属順天堂医院の消化器内科や、越谷市立病院の消化器科で勤務医としてご活躍されたとのことですが、これまでにどのような疾患を診てこられましたか?
消化器疾患は、胃潰瘍や逆流性食道炎、機能性ディスペプシア、腸炎、腸閉塞、十二指腸潰瘍、脂肪肝、肝硬変、肝炎、膵炎、さらには胃がんや大腸がんまで、多岐にわたります。勤務医時代は、これら幅広い疾患の診療に携わり、日々の臨床を通して多くの経験を積むことができました。また、消化器病専門医、肝臓専門医、消化器内視鏡専門医の資格を取得し、専門性をさらに深めながら研鑽を重ねてまいりました。
さらに、順天堂大学大学院では、難病に指定されている原発性胆汁性胆管炎(PBC)の研究に従事し、医学博士号を取得しています。
そして2022年5月に「北越谷そめやクリニック」を開業されました。開業を決意された経緯や想いをお聞かせください。
開業を決意した大きなきっかけは、父の逝去に伴い、実家の浄光寺の住職を急遽継ぐことになったことでした。しばらくの間は、病院での勤務医としての仕事と、住職としての務めを両立していましたが、両方を行き来する生活は次第に多忙を極め、どちらの仕事にも十分に時間を割くことが難しくなっていきました。
そこで、「自分のクリニックを持つことで、医師としての診療と住職としての務め、その両方をしっかりと果たせる環境をつくりたい」と考えたのです。
住職は、人の“心の苦しみ”に寄り添うのが務めであり、医師は、人の“身体の苦しみ”に寄り添う仕事です。大学時代に心理学も学んでいた私にとって、この二つの役割には共通するものがあると感じています。大学病院や地域の中核病院での診療にも大きなやりがいを感じていましたが、これからは地域の住職として、そして地域の医師として、生まれ育った北越谷で心と体の両面から人々を支えたい――その想いが、開業を決意した一番の理由です。
