「人を笑顔にしたい」と形成医外科医を志す。形成外科・皮膚科・美容外科で総合的な臨床経験を積んだ後、幕張の地に開業
形成外科での開業は珍しいですね。そもそも形成外科とはどのような疾患を診る診療科なのでしょうか?
形成外科とは、体の表面に生じた異常や変形などを、機能的かつ外見的(見た目)に改善する診療科です。専門とする対象範囲が広いことが特徴で、内臓器や顔を除く骨以外であれば扱います。特に全身の皮膚を扱うため、各部位の皮膚性状・疾患に精通する必要があります。
具体的な対象疾患は皮膚がんなど悪性腫瘍、粉瘤やほくろなどの良性の皮膚腫瘍、やけど・切り傷やその傷あと、眼瞼下垂、顔面神経麻痺、顔の骨折、口唇裂や多指症など小児疾患などの手術治療、あざのレーザー治療などがあげられます。マイクロサージャリー(顕微鏡下手術)という技術を用いて、食道がんや頭頚部がん、乳がん手術における組織再建なども形成外科の専門領域です。また美容外科などの修練は形成外科が基となっており、欧米では形成外科のトレーニングが必須となっています。
開業されるまでのご経歴をお聞かせください。
福島県立医科大学医学部を卒業後、同大学形成外科に入局し、その後は形成外科医として静岡県立こども病院や群馬県立がんセンターに勤務しました。静岡のこども病院は全国から患者さんが来院される医療機関で、先天異常疾患や全身やけど、重度外傷など数多くの外科治療携わってきました。子どもの治療はやはり大人と異なる部分も多いですが、小児のみの専門病院で従事できた経験は、子どもの治療についても自信が持てるようになりましたね。次に勤務した群馬のがんセンターでは、多くのがん症例を経験し、がんの治療に伴うマイクロサージャリーでの様々な組織移植手術や乳房再建手術においても研鑽を積んできました。
その後、大学病院で研究もされていたのですね。
はい。形成外科医として研鑽を重ねる中で、専門医資格や指導医資格も取得できましたので、一度母校の大学病院に戻り、ずっと挑戦したかった研究活動にも打ち込みました。扱ったテーマは「創傷治癒」、わかりやすく言うと「皮膚にできた傷が、どうやって治るか」について、掘り下げた研究です。この時期は研究の傍ら、臨床医としても勤務したり後輩の指導医を務めたりなど、忙しくも充実した日々を過ごしていましたね。
そこから開業を目指されたのは、どのような経緯があったのでしょうか?
福島の大学病院に戻ったのがちょうど東日本大震災の直後でした。医師が足りないという事情から皮膚科の診療を受け持つことが多くなり、医局から派遣された先の医療機関でも皮膚科を担当する機会が増えていました。もともと形成外科が専門とする領域は皮膚科と重なっている部分が多く、そのころから漠然と「形成外科と皮膚科、診療科の垣根を超えた幅広い治療を提供できたら、患者さんにとってより役立つのではないかと、クリニックの原型となる構想を思い描き始めたのです。
さらに、「保険診療では限界もあるため美容領域の診療も提供できたほうが、より柔軟に患者さんのニーズに応じることができるだろう」と考え、誘いを受けていた美容クリニックでの院長職も引き受けました。そこでは医師への指導も務めながらさまざまな美容診療に携わり、現在の美容医療の主流に触れ開業に必要な知見を深めることができました。声をかけてくれた大学の先輩には今でもとても感謝しています。こうして、形成外科・一般皮膚科・美容皮膚科の3領域の診療を提供するという、現在のクリニックのコンセプトを整えることができ、2022年に妻の実家が近かったこの幕張の地に開業いたしました。