大学時代の経験からペインクリニックを志望。「痛み」を根本的に治療したいという想いから開業を決意
はじめに、先生が医師を志したきっかけや、麻酔科を専門に選ばれた理由をお聞かせください。

父が産婦人科の開業医をしており、小さい頃から医療が身近な存在でした。診療に真摯に向き合う父の姿を見て育つうちに、私自身も自然と「医師になりたい」と思うようになり、兵庫医科大学に進学しました。
大学時代はアメリカンフットボール部に所属していたのですが、激しい練習で腰を痛め、長い間その痛みに悩まされていました。そんな中、ペインクリニックで治療を受けたことで症状が劇的に改善し、再び思いきり体を動かせるようになったのです。このとき、「痛みを和らげる医療」が人の生活の質を大きく変えるということを実感し、ペインクリニックの分野に強く惹かれるようになりました。
ペインクリニックの診療を担うことの多い麻酔科医は、手術中の麻酔管理だけでなく、術前・術後の全身管理にも深く関わる重要な役割を担っています。患者さんの安全を守るために、常に全身の状態を的確に把握しながら、必要な処置を判断・実施していく──その全身を診る力は、手術の場だけでなく、医師として幅広い診療を行う上でも大きな強みになると考え、麻酔科を専門に選びました。
先生は、大阪市立総合医療センターの麻酔科や兵庫医科大学病院のペインクリニック部門など、さまざまな医療機関でご活躍されてきました。これまで主に取り組まれてきた診療内容についてお聞かせください。
医師としてのキャリアは、兵庫医科大学および大阪市立総合医療センターの麻酔科から始まりました。最初の7年間は、手術に伴う麻酔管理を担当し、多くの時間を手術室で過ごしました。患者さんの全身状態を的確に把握し、術中の急変にも冷静に対応する麻酔科医としての基礎を、この時期に徹底的に培うことができました。
その後は、兵庫医科大学病院のペインクリニック部門や、おおさかグローバル整形外科病院など、民間の医療機関でペインクリニック診療に携わってきました。
大学病院では、慢性的な痛みに長く悩まされている患者さんや、他院のペインクリニックから紹介された難治性のケースに対応することが多く、専門的かつ丁寧な診療が求められる環境でした。一方で、民間病院では、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、帯状疱疹後神経痛といった、より日常的にみられる痛みの診療に多くあたり、幅広い症例を経験しました。
なかでも「腰部脊柱管狭窄症」は、私が重点的に診療・研究に取り組んできた疾患です。腰部脊柱管狭窄症は、脊髄神経が通る管状の空間(脊柱管)が、加齢による骨の変形や椎間板の突出などが原因で狭くなり、神経が圧迫されることで痛みやしびれが生じます。診療経験を重ねるなかで、より深くこの疾患に向き合いたいという思いから、兵庫医科大学大学院の疼痛制御科学講座に進学し、腰部脊柱管狭窄症に関する研究を通じて医学博士号も取得しました。
そして2023年2月、「つねとう痛みのクリニック」を開院されました。開業に至った背景や、その想いについて教えてください。
これまで大きな病院のペインクリニックで、数多くの患者さんの痛みの治療に携わるなかで、痛みが軽減し「楽になった」と笑顔で帰られる姿に大きなやりがいを感じてきました。
一方で、治療によって一度は痛みが引いても、しばらくすると再び同じ痛みを抱えて来院される方も少なくなく、その現状に課題意識を持つようになりました。痛みを「一時的に取り除く」だけでなく、「痛みを繰り返さない体づくり」にまでアプローチできなければ、本当の意味で患者さんのQOLを高めることはできないのではないか──そんな想いが次第に強くなっていきました。
そこで私が目指したのは、「痛みをとる治療」と「痛みにくい体をつくる治療」の両輪で、痛みに根本から向き合うクリニックです。その理想を実現するためには、自らの手で診療環境を整え、一貫した方針で治療を行う必要があると感じ、開業を決意しました。
