どんな痛みでも気兼ねなく相談できるのがペインクリニック。痛みを諦めず、一緒に改善を目指したい
先生が日々の診療で心がけていることを教えてください。

何よりもまず大切にしているのは、患者さんのお話を丁寧に伺うことです。痛みにはさまざまな背景がありますが、症状だけでなく、生活環境や日常の過ごし方が原因になっているケースも少なくありません。そのため、症状の詳細はもちろん、普段の生活やお仕事、趣味なども含めて幅広くお話を聞かせていただき、患者さんの背景にある要因を探ることを心がけています。
また、実際に治療へ進む際には、治療のゴールを患者さんと一緒に明確にすることも大切にしています。痛みをどの程度まで軽減させたいのか、どのような生活を取り戻したいのか──その目標は人それぞれです。例えば、「日常生活に支障が出ないようになればいい」とおっしゃる方もいれば、「スポーツを再開できるまで回復したい」という方もいらっしゃいます。
治療法についても、注射がいいのか服薬がいいのか、あるいはリハビリを中心に進めたいのかなど、ご本人の希望を尊重しながら相談し、適切な方針をご提案しています。
これからも、患者さん一人ひとりの声に耳を傾け、その人らしい日常が取り戻せるよう、寄り添った診療の提供に努めてまいります。
休日はどのようにお過ごしになっていますか?
3人の子どもがいまして、末っ子はまだ3歳。まだまだ手がかかる時期ですので、診療が終わった後や休日は、できるだけ家族と一緒に過ごすようにしています。休日には近場に出かけたり、季節の行事を楽しんだりしています。最近では、ゴールデンウィークに家族で鹿児島旅行に行き、自然や食を満喫してきました。子どもたちの笑顔に元気をもらいながら、私自身もリフレッシュできる貴重な時間です。
もともとマラソンやトライアスロンが趣味で、以前は大会にも参加していたのですが、現在は膝を痛めてしまい、本格的なトレーニングは控えています。とはいえ、完全復帰を目指して、理学療法士の指導を受けながら地道にリハビリに取り組んでいるところです。自分自身が“痛みと向き合う患者”の立場になることで、あらためて気づかされることも多く、診療にも活かせる経験だと感じています。
今後の展望をお聞かせいただけますか?
ペインクリニックという診療科は、まだ広く知られているとは言いがたく、「どのようなときに受診すればいいのかわからない」と戸惑われる方が少なくありません。また、「整形外科で診てもらったがなかなか痛みが改善しない」「いくつかの医療機関で検査を受けたが原因が特定できなかった」といった経緯で来院される方も多く、なかには“最後の選択肢”のように感じてお越しになる方もいらっしゃいます。
しかし、ペインクリニックは決して“最後の砦”ではなく、痛みのある方が早い段階から相談できる身近な診療科であるべきだと考えています。特に、痛みは早期に対応することで慢性化を防ぎやすく、治療の選択肢も広がります。そのため、当院では強い痛みだけでなく、日常の中で感じる軽い違和感や不調についても、気兼ねなくご相談いただきたいと思っています。たとえば、肩こりや腰痛といった典型的な症状だけでなく、それに先立つ体のだるさや重さ、むくみなどの“前ぶれ”のような症状も、実は痛みの兆候である可能性があります。こうした状態でも、ペインクリニックでの診療が役立つことがあります。
今後も、「痛みを我慢せずに相談してよかった」「治療を受けたことで生活が変わった」と感じていただけるよう、一人ひとりの症状や背景に丁寧に向き合いながら診療を続けてまいります。ペインクリニックが、もっと身近で頼れる存在として広く認識されるよう、情報の発信と質の高い医療提供の両面から取り組んでいきたいと考えています。
最後に、読者へのメッセージをお願いいたします。

痛みがあると、思うように体を動かせなくなり、私自身も膝を痛めて趣味のランニングやトライアスロンをお休みしているように、好きなことを諦めざるを得ない場面も出てきます。
ご高齢の患者さんのなかには、「年齢のせいだから、痛みは仕方ない」と我慢されている方も少なくありません。しかし、痛みを取り除いたり、痛みが起こりにくい体づくりに取り組んだりすることは、年齢にかかわらず可能です。完全に痛みをなくすのは難しくても、痛みを軽減し、日常生活が楽になるように導くことは十分にできます。
痛みのせいで動くのがつらくなっている方、やりたいことを我慢されている方にこそ、「もう少し楽に過ごせる方法があるかもしれない」と感じていただけたらと思います。「このくらいの痛みで相談していいのかな」とためらわず、どうか気軽にご相談ください。どんなに小さな痛みでも、適切に対処することで、その後の生活が大きく変わることがあります。皆さんが毎日を前向きに、快適に過ごせるよう、私たちも全力でサポートさせていただきます。