獣医師の父の影響を受け医師に。逼迫する小児医療を、子どもの頃に憧れた「町のお医者さん」として支えたいと開業
はじめに、小玉先生が医師を志したきっかけをお聞かせください。
獣医師の父の背中を見ながら育ちましたので、幼い頃から自分も「命に関わる仕事がしたいな」と漠然と思っていたんです。小学生のときに、「ブラックジャック」や「スーパードクターK」といった医療マンガに感銘を受けて、獣医師ではなく医師になりたいという思いが強くなり、小学校の卒業文集にも将来の夢は「お医者さん」と書いていましたね。
小児科を専攻されたのは、どのような理由からですか?
小児科を専攻したのは、「子どもが好きだから」という、とてもシンプルな理由なんです(笑)。それに、小児科医は、科目を越えた幅広い知識が必要で、症状を見抜くための観察力や洞察力も求められます。非常にやりがいを感じるのと同時に、子どもたちが元気になっていく姿や成長を見守ることができるのも嬉しいですね。
医学生の頃は、ターミナルケア(終末期医療)を支えるホスピス医や形成外科の分野に興味を持ったこともありました。しかし、臨床実習で小児科を経験してからは、やはり、自分には小児科が合っていると確信できましたし、実際に、やりがいも感じています。
開業までのご経歴を教えてください。
千葉大学医学部を卒業後、千葉県立病院群での初期研修、千葉県こども病院での小児科専攻医研修を受け、同病院の小児救急総合診療科に勤務しました。各科目と小児科診療の基礎について研鑽を積んだ後、千葉市立海浜病院小児科に勤務し、呼吸器や消化器、熱性けいれんといった急性疾患から気管支喘息やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患を始め、小児科全般について幅広く携わってきました。特に、感染症については、私の得意分野として深く研鑽を積むことができたと思っています。
小児救急や希少な感染症の診療にも携わってこられたそうですね。
特に、千葉市立海浜病院で、高熱や腹痛など救急で来院するお子さんを数多く診療しました。感染症については、稀に発症する「ランゲルハンス細胞組織球症」という疾患を診療したことが印象深いですね。症状は、頸部のリンパ節など全身のいろいろな部位が腫れるのですが、稀な病気なだけになかなか診断がつかず、治療をしても症状が再燃していたのです。原因を突き止めるために千葉大学医学部附属病院をご紹介し、細胞診によって診断が確定したのですが、より専門的な医療機関と連携することの意義を改めて実感し、私自身の大きな学びにもなりました。
千葉市立海浜病院では小児科主任医長を務められ、手腕を振るわれてきた小玉先生が開業医に転身された理由をお聞かせください。
当院の隣で開業されている「打瀬並木道クリニック」の舟波裕(ふなみ ゆたか)先生からお誘いいただいたのが直接的なきっかけです。舟波先生は、私の大学の先輩で、がん治療、外科、救急で活躍されてきたベテラン外科医です。「一緒に地域医療をやろう」とお誘いいただいときに、ちょうど私自身も働き方を変えたいなと考えていたところでしたので、逼迫する小児医療を地域医療の立場から支えていきたいと考え、開業を決断しました。
それに、私が好きなマンガの『ブラックジャック』などに出てくる「町のお医者さん」は、子どもの頃からの憧れでもあったんです。開業医になることで、夢も叶えられるという思いもありました。