消化器内科医として内視鏡検査・治療に研鑽を重ねた後、祖父や父のように地域医療に貢献したいと開業へ
はじめに、先生が医師を志されたきっかけをお聞かせください。

私の祖父は、戦後の焼け野原の中で開業し、93歳になるまで地域の患者さんのために診療を続けた医師でした。父もまたその背中を追い、地域医療に尽力してきました。そんな二人の背中を見て育つうちに、私の中にも「人のために尽くす医師になりたい」という思いが自然と芽生えたんです。その思いを胸に、東京医科大学へ進学し、医師としての道を歩み始めました。
大学卒業後から開業されるまでのご経歴を教えてください。
私は内科医を志向していましたが、内科にもさまざまな分野があり、卒業時点ではどの分野を専門にするか具体的なビジョンがありませんでした。そのため、まずは実際の内科診療の場で経験を積もうと考え、東京医科大学病院の臨床検査医学科へ入局しました。
東京医科大学病院の臨床検査医学科では、血液凝固異常症やHIV感染症などの疾患を中心に、総合内科的な診療にも携わり、幅広い内科疾患の診療経験を積むことができました。そのなかで出会ったのが、消化器内科での内視鏡治療です。
内視鏡治療は、開腹手術などに比べて患者さんの身体的なご負担を軽減することができますし、内視鏡スコープを通じて発見した悪い部分を取り除くという治療は明快です。そして、検査から治療まで一貫して自分自身で担当できるというやりがいもあります。そうしたところに魅力を感じ、消化器内科を専門とすることを決めました。
これまで診てこられた主な症例についてお聞かせください。

佼成病院(現・杏林大学医学部付属杉並病院)、豊島病院(現・東京都立豊島病院)、江戸川病院の消化器内科に勤務し、内視鏡検査・治療を中心に幅広い消化器疾患の診療に携わり、消化器病専門医※1・消化器内視鏡専門医※2・肝臓専門医※3の資格も取得して研鑽を重ねてきました。
内視鏡治療にもさまざまな手法がありますが、当時主に取り組んでいたのが、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)です。これは、内視鏡に電気メスを通して病変部を切除する手技で、粘膜内にある早期がんであれば大きさや形に関わらず一括で切除でき、臓器の温存が可能な治療法です。高度な技術を駆使し、胃がんや大腸がん、食道がんなど数多くの症例を担当しました。
また、膵がんや胆管がんなどの治療では、十二指腸まで挿入した内視鏡を通して胆管や膵管にステントを挿入し、胆汁や膵液の流れを改善する内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)も多く経験しました。こうしたさまざまな症例を通じて、確かな診断力と治療技術を培ってきたと感じています。
※1 日本消化器病学消化器病専門医 ※2 日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医 ※3 日本肝臓学会肝臓専門医
江戸川病院では消化器内科部長や内視鏡センター長などの要職を務められた先生が、開業を決意された経緯や想いをお聞かせください。

もともと、祖父や父のように地域の方々に寄り添いながら医療に貢献したいと考えていました。一方で、江戸川病院では消化器内科部長・内視鏡センター長として、日々の診療とともに後進の育成にも携わりながら、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)をはじめとする内視鏡治療技術を高め、安心して提供できる体制づくりにも取り組んできました。そうした環境整備が実を結び、診療を信頼できる仲間たちに託せるようになったことを機に、長年の目標であった開業を実行に移す決心を固めました。
開業地としてこの場所を選んだ最大の理由は、駅からのアクセスが良いことです。駅に近ければ、お忙しい方でも通いやすく、鎮静剤を使用した内視鏡検査や治療後も安心してお帰りいただけます。また、これまで勤務してきた豊島病院や江戸川病院で診療していた患者さんにもご来院いただきやすい立地でもあります。
ご縁をいただいたこの地で、これまで培ってきた経験を生かし、信頼される地域医療を実践していきたいと考えています。