心臓手術の映像に感銘を受け医師を志す。乳腺外科医として乳がんの治療を中心に研鑽を積み、女性が通いやすいクリニックを開業
はじめに、先生が医師を志したきっかけをお聞かせください。

もともと生物に興味を持っていましたが、きっかけになったのは小学5年生のときに神戸で体験した阪神・淡路大震災と、中学生の頃にテレビで観た心臓手術の映像です。人工心肺を使って心臓を止めた状態から手術を行い、再び心臓が動き出すまでの光景にとても感動して涙が止まりませんでした。それまで、医師という職業はどこか遠い存在でしたが、「人の命に直接関わる、こんなにすごい仕事があるのか」と強く心を動かされ、医師になろうと決意しました。
数ある診療科の中から、なぜ乳腺外科を専攻されたのでしょうか?
京都大学医学部を卒業後は、大阪赤十字病院で初期研修を受けました。外科手術は手先の器用さや体力が求められるイメージでしたので、当初は「自分は外科医に向いていないだろう」と内科系を志望していました。ところが、研修で外科をまわった際、手術のおもしろさとやりがいに魅了され、さらに乳腺外科の診療を担当したとき、患者さんが「女性医師だと話やすくて嬉しい」「傷を診てもらうのにも安心感がある」と喜ばれていたんです。そういった経験から、女性の患者さんが多い乳腺外科でのやりがいと、女性医師だからこそ応えられるニーズがあると感じ、乳腺外科の道を選びました。
また、乳腺外科は、検査から診断、治療、手術や術後の経過観察まで、同じ科の医師が一貫して担当します。最初から最後まで、責任を持って病気や患者さんに向き合える点も魅力でした。
貴院を開業されるまでのご経歴について教えてください。
京都大学医学部附属病院の乳腺外科に長く勤務し、主に乳がんの診療に携わってきました。数多くの乳がん手術に携わり手技を磨くだけでなく、大学病院では企業や他大学との共同研究も盛んに行っていましたので、臨床試験などの治験にもたくさん関わりました。乳腺外科に在籍していた約10年の間に次々と新薬が開発され、治療成績(ある治療の結果、患者の状態がどの程度良くなったかを示す指標)が良くなる過程や、乳がん治療の進歩を肌で感じながら診療にあたりました。今では当たり前に使われている薬の開発段階から治療に携われたのは貴重な経験だったと思います。
また、大学院にも進み、「トリプルネガティブ乳がん」という難治性乳がんについてのMRI画像所見や術前化学療法の効果予測などをテーマに取り組み、学位を取得。その間に出産・育児も経験しながら、修了後は乳腺専門医として乳腺疾患の診療や、後進の育成に携わり幅広く経験を積んでまいりました。
そして、2025年7月に「あや乳腺外科クリニック」を開院されました。先生が開業に至った想いをお聞かせください。
大学病院には乳がんのステージが進行した患者さんも多く、「もっと早く発見できていれば…」と感じることが多々ありました。また、手術を終えた安定期の患者さんは地域のクリニックで治療を継続しますが、乳腺外科は地域差が大きく、クリニックの少ない地域は常に患者さんの受け皿が不足している状態です。
ここ高槻市も乳腺外科クリニックが少なく、地域の方々が受診しづらい環境であると感じていました。「もっと乳房の悩みを気軽に相談できる場所をつくりたい。患者さんを長くサポートしていきたい」という想いが強くなり、自身のクリニックを開業しようと決意しました。ここは、高槻市駅から徒歩1分と忙しい方も通院しやすい場所ですので、乳がん検診や気になる症状があるときは気軽に受診していただければと思います。

