呼吸器内科医として急性期病院で研鑽を積んだ後、地域医療を支える在宅医療の専門クリニックを開業
はじめに、医師を志したきっかけをお聞かせください。

子どもの頃から本を読むのが好きで、中学生のときに心理学に関する書籍に興味を持ったことがきっかけです。当初は「心のケアを通して人の役に立ちたい」という思いから精神科医を目指し、名古屋大学医学部に進学しました。両祖父や伯父・叔父が医師でしたので、医療が身近な環境だったことも少なからず影響していたかもしれません。
ただ、医学部で学ぶうちに「心」を理解するためには「体」のことも知る必要があると感じ、まずは全身を幅広く診られるようにと内科を専攻しました。
開院されるまでのご経歴を教えてください。
名古屋大学医学部を卒業後、伊丹病院で初期研修を受けました。当時は総合診療が注目されており、私自身もその多面的な診療スタイルに強く惹かれていました。伊丹病院の呼吸器内科では、全身の症状から病気を推測していく、まさに総合診療的なアプローチが行われており、その臨床現場に大きな刺激を受けたことが呼吸器内科を専門とする決め手となりました。
その後は、大阪大学医学部附属病院の呼吸器免疫内科に入局し、肺がん、間質性肺炎、肺気腫、喘息など、幅広い呼吸器疾患の診療に携わりました。診療と並行して大学院に進学し、6年間にわたって肺がん治療に関する研究で医学博士号を取得しました。
研究活動に一区切りがついた後は、大阪警察病院の呼吸器内科に勤務し、約3年間、地域の急性期医療の現場で診療を行ってきました。同院は、救急診療でさまざまな疾患の患者さんが運ばれてくるためとても忙しい日々でしたが、呼吸器疾患に限らず多様な急性疾患への対応を通じて、臨床医として研鑽を積むことができました。
医長も務められた先生が在宅医療のクリニックを開業されたのは、どのような経緯からでしょうか?
もともと開業を意識していたわけではありませんが、病院で働くうちに在宅医療の必要性を痛感するようになりました。これは日本全体の問題でもありますが、急性期病院は常に患者さんで溢れ、ご高齢の方を中心に入院が必要となるケースが増える一方で、病床数には限りがあり受け入れが難しい状況が続いています。行き場がなく困っている方々を目の当たりにし、国の急性期病床数削減の方針もあり、今後はますます在宅医療による診療が重要になると考え、開業を決意しました。
また、在宅医療の現場では、医師の経験によって提供される医療の質に差が出るという課題も感じていました。「呼吸器専門医として培ってきた経験を活かし、より質の高い在宅医療を届けたい」という想いも、開業を後押しする大きな原動力となりました。
どのような患者さんが貴院を利用されていますか?
訪問診療の対象となるのは、主に通院が困難になった方々です。ご高齢で寝たきりの方や認知症の方に加え、がんの終末期や間質性肺炎の末期で大学病院や基幹病院での治療を終え、緩和ケアを必要とされる患者さんも多くいらっしゃいます。また、終末期医療を病院で受ける直前まで在宅で過ごしたいという患者さんの希望にも、できるだけ寄り添えるように病院と連携して連絡を取りながら診療を行っております。
当院の訪問エリアは、クリニックから車で30分程度の距離にある吹田市、豊中市、箕面市などが中心となりますが、その他の地域でも患者さんの病状や在宅医療の必要性を考慮し、柔軟に対応しています。
