患者が納得し、満足する診療を目指し、きめ細やかに対応。公的な仕事にも幅広く取り組み、地域住民の目の健康を守り続ける
日々の診療で心がけていることはありますか?
患者さんは、何かしらの不安や不調を抱えて、勇気を出して当院を訪れてくださっています。そのことを常に心に留めながら、たとえ小さなことでも「来てよかった」と思っていただける診療を目指しています。
特に意識しているのは、ご自身の病気や治療について、しっかりと理解し、納得していただくことです。同じ疾患であっても、受け止め方や不安の感じ方は人それぞれですから、言葉の選び方や説明の順序などを工夫しながら、一人ひとりの患者さんに合った丁寧な説明を心がけています。
また、私一人ではなく、看護師やスタッフ全員で協力し、安心感のある温かな雰囲気づくりにも努めています。医療機関である前に、「ここに来れば話を聞いてもらえる」「きちんと向き合ってくれる」と感じていただけるような、信頼と安心のある場所でありたいと思っています。
ロービジョンケアについても、きめ細やかなサポートをされているそうですね。
院内とご自宅では照明や環境が異なるため、見え方にも違いが生じます。ですから、できる限り時間をつくって、実際にご自宅や施設へ伺い、照明の位置やテレビの配置など、生活環境に応じたアドバイスを行うようにしています。
また、院内にはさまざまな拡大鏡や視覚補助具をご用意しており、一人ひとりの見え方に合わせたサポートが可能です。見えにくさに悩まれている方は、いつでもご相談にいらしてください。
螺旋階段やピアノがあり、ゆったりと落ち着ける素敵な空間ですね。

ありがとうございます。患者さんに余計な緊張を与えないよう、ホテルのようにリラックスできる空間を意識して設計しました。螺旋階段は、手術室のある2階へ楽しく上がっていただけたらという思いで取り入れたものです。
ピアノは自動演奏で音楽を流していて、診察や検査の前に、少しでも穏やかな気持ちでお待ちいただければ嬉しく思います。
お忙しい日々かと思いますが、休日はどのように過ごされていますか?
実は、「趣味がないのが趣味」といったところでして(笑)。研修医時代は本当に寝る間もない毎日でしたが、開業してからも変わらず、日曜・祝日には手術を行うことも多く、休診日も学校健診や医師会の業務、学会への出席などで予定が埋まってしまいます。
とはいえ、最近は少しずつ息抜きの時間も取れるようになってきました。地方で開催される学会に参加した際には、時間を見つけてその土地の名所や史跡を訪ねることもあり、忙しい中にも小さな楽しみを見つけています。
眼科における在宅医療の重要性についても、啓発に力を入れておられるそうですね。
はい。現在、在宅医療に携わるのは主に内科系の医師が中心で、眼科領域での在宅診療はまだ十分に普及していないのが実情です。そのため、緑内障や糖尿病網膜症といった進行性の疾患が見過ごされ、失明の危機に直面している在宅療養中の方が少なくありません。
こうした現状を変えるために、全国規模の勉強会や学会などで、在宅における眼科医療の必要性や可能性について発信しています。限られた視力で日常生活を送る方々を支えるには、早期発見・継続的なケアが欠かせません。今後も、在宅眼科医療の重要性を一人でも多くの医療者に知っていただけるよう、啓発活動を続けていきたいと考えています。
最後に、読者へメッセージをお願いいたします。

近年はインターネットを通じて、誰でも医療情報にアクセスできるようになり、患者さんの知識量も以前とは比べものにならないほど増えていると感じています。一方で、誤った情報や極端な内容に惑わされ、かえって病状を悪化させてしまうケースも少なくありません。
そうした中で、医師としての役割は、単に診断や治療を行うだけでなく、信頼できる情報を見極め、正しく理解していただくための“案内人”であることがますます重要になっていると感じています。
また、日本の医療は、国民皆保険制度のもとで高度な医療を保険診療として受けられる、非常に恵まれた仕組みです。その恩恵を最大限に活かすためには、医師と患者さんの信頼関係と、丁寧なコミュニケーションが何より大切だと考えています。
これからも、患者さん一人ひとりの声に耳を傾け、“二人三脚”で治療に取り組む姿勢を大切にしていきたいと思います。どんな些細なお悩みでも構いませんので、どうぞお気軽にご相談ください。