“町のお医者さん”であった父が理想の医師像。麻酔科医として臨床経験を積んだのち開業へ
はじめに、医師を志したきっかけを教えていただけますか?
私の父が医師で、この場所で開業医をしていました。父の専門は外科でしたが、いわゆる“町のお医者さん”として患者さんのさまざまな疾患に対応し、夜間には往診したり、警察医や学校医の仕事も務めるなど、地域のかかりつけ医の役割を幅広く担っていました。その姿を身近で見ているうちに、自然と医師を志すようになりました。
東京医科大学に進学し、1992年にご卒業、同学の麻酔学教室に入局されました。なぜ麻酔という領域を選ばれたのですか?
麻酔科の医師には、手術中の麻酔管理、集中治療室での集中治療、ペインクリニックなど外来での痛みの治療といった仕事がありますが、共通して求められるのは、患者さんの呼吸や循環などの状態を良好に保つ全身管理の技術です。この全身管理ができるようになれば、医師として対応できる幅が広がり、今後どのような領域を専攻しても活かすことができると考えました。
東京医科大学病院の麻酔科では、手術室での麻酔管理を中心に、集中治療室での治療やペインクリニックの診療に携わってきました。
1997年から2年間、スウェーデンのルンド大学に留学されました。
日本では臨床に携わり医師としての研鑽を積んでいたのですが、留学中は基礎研究に従事しました。ルンド大学の研究所と連携して脳虚血という分野について研究し、医学博士の学位を取得しました。
帰国後は厚生中央病院の麻酔科に勤務し、ここでも手術室での麻酔管理を中心に臨床に携わりました。そして2001年からは、父が開業していた三浦外科医院に勤務し、2004年に同院を継承するかたちで三浦医院を開業しました。
大学病院などで麻酔科医として勤務する選択肢もある中で、継承・開業しようとお決めになった理由をお聞かせいただけますか?
麻酔科医の仕事も非常にやりがいがあったのですが、私にとって理想の医師像は、父のような“町のお医者さん”です。自分が年を重ねたときにどのようなことをしているのが理想だろうかと考えたときに、基幹病院や大学病院の勤務医よりも、地域の中で医療を提供する開業医のほうが自分に合っているような気がしました。
それともう一つ、子育てとの両立も大きな要因です。勤務医の場合、仕事と子育ての両立がどうしても難しくなる場面があります。子どもをのびのびと育てながら医師の仕事を続けていくには、都市部の勤務医ではなく、生活に密着した地域で開業するほうがいいのではないかと思うところもありました。