父の思いを受け継ぎ、地域のかかりつけ医に。医療と介護を包括的に支える地域密着型クリニックを運営
はじめに、冨永先生が医師を志されたきっかけと、循環器内科を専門に選ばれた理由をお聞かせください。

私の父がこの場所で開業したのは、今からおよそ55年前になります。幼い頃から、診療に向き合う父の姿を日々そばで見て育ち、その背中を自然と追いかけるように医師を志すようになりました。やはり父の影響はとても大きかったと思います。
循環器内科を選んだのは、心筋梗塞や致死性不整脈といった重篤な疾患に対して、カテーテル治療などで直接命を救えることに魅力を感じたからです。さらに、治療が終わってからも術後のフォローや体調管理、生活習慣病のコントロールを通して、患者さんと長く関わることができます。命を守るだけでなく、その後の生活の質を支えるという面でも貢献できる点に、大きなやりがいを感じています。
貴院を継承されるまでのご経歴をお聞かせください。
川崎医科大学を卒業後、鹿児島大学附属病院で初期研修を受け、循環器内科に入局しました。その後は、鹿児島大学病院をはじめ、大学関連の基幹病院などで、心筋梗塞や不整脈、心不全、高血圧、脂質異常症といった循環器疾患を幅広く診療してきました。
とくに鹿児島市医師会病院では、当直を含め泊まり込みで重篤な患者さんの全身管理に携わるなど、現場に張り付きながら臨床経験を重ねる日々でした。厳しくも充実した環境の中で、循環器診療の奥深さと責任の重さを実感し、医師として大きく成長できたと思います。
1997年に貴院を継承されたそうですが、何かきっかけがあったのでしょうか?
父が病に倒れてしまったことがきっかけでした。当時、私は大学に戻って研究を始めていたのですが、下の兄弟がまだ医学生だったこともあり、家族のことを考えて私が医院を継ぐことを決意しました。自然な流れではありましたが、父が長年築いてきた地域医療を守りたいという思いも強くありました。
すでに30年近くこの場所で診療を続けてこられていますが、当初と比べて診療内容に変化はありますか?

そうですね。小児医療と入院体制については、時代の流れとともに変化しています。小児科については、現在も一般的な疾患や予防接種などを中心に診療していますが、より専門的な領域は小児科専門医の先生にお任せするようにしています。
また、入院については、父の代の開業当初は無床診療所としてスタートしましたが、地域のニーズに応えるかたちで途中から19床の有床診療所へと拡充しました。2020年からは保険制度の改定に伴い、介護保険で利用できる「介護医療院」へと転換しましたが、医療の内容自体はほとんど変わっていません。介護が必要でありながら、医療的な処置も継続して必要とする方々の入所を引き続き受け入れています。
さらに、高齢化の進行に伴い、通院が難しい患者さんが年々増えていますので、そのような方々にも継続的な医療を届けられるよう、在宅支援診療所として訪問診療も行っています。
お城のような重厚感のある、素敵な外観ですね。

ありがとうございます。医院を継承するにあたり、まず考えたのは「患者さんが緊張せず、気軽に足を運べる場所にしたい」ということでした。その思いを形にするため、院内は、明るく開放的でリラックスして過ごせる空間づくりを心がけました。
グリーンを基調とした内装は、心を落ち着かせ、やさしい印象を与えられるようにデザインしています。来院された方が少しでも穏やかな気持ちになっていただけたら嬉しいですね。