高度ながん手術を多数手がけた頭頸部外科のエキスパートが、耳、鼻、のどを幅広く診療するホームドクターに。30年以上にわたり地域医療を守り続ける
はじめに、横田先生のご経歴についてお聞かせください。

高校生の頃に医師を志し、信州大学医学部に進学しました。卒業後は研修を経て、同大学の耳鼻咽喉科に入局。なかでも頭頸部外科を専門とし、長野赤十字病院、信州大学病院、長野厚生連北信総合病院など県内の主要な医療機関で、頭頸部がんの手術を中心に数多くの症例に携わってきました。
頭頸部がんとは、具体的にどの部位に発生するがんなのでしょうか?
頭頸部がんとは、頭部から頸部にかけて発生するがんの総称です。より詳しく言うと、頭蓋底(頭蓋骨の底部)から鎖骨の上までの範囲で、脳と眼球を除くすべての部位に発生するがんを指します。具体的には、口腔がん、咽頭がん、喉頭がん、鼻・副鼻腔がん、唾液腺がん、甲状腺がん、さらにまれなケースでは外耳道がんなども含まれます。これらはすべて、頭頸部外科の治療対象となります。
頭頸部がんの外科手術には、高度な技術が求められるそうですね。
はい。頭頸部がんは、食べる・話す・においを感じるといった、生活に欠かせない機能に深く関わる病気です。そのため、手術による影響が大きく、特に早期発見が遅れると、切除範囲が広がり、嚥下(飲み込み)や発声、嗅覚などの機能障害が残ったり、顔貌の変形を伴うこともあります。
こうした影響を最小限に抑えるため、手術では機能をできる限り温存することが重要で、非常に繊細で高度な技術が求められます。また、腫瘍を取り除くための手術だけでなく、術後の機能再建のための手術も必要となるケースがあります。私はこれまで、そうした多くの症例に携わってきました。
頭頸部がん手術のエキスパートとして活躍されてきた横田先生が、開業を決断された理由をお聞かせください。
頭頸部がんの手術、とくに進行がんの症例では、腫瘍の切除に加えて術後の機能再建も必要となるため、長時間に及ぶことが少なくありません。外科手術には、高い気力・体力・集中力が求められます。ベストな治療を提供し続けるためにも、年齢を一つの区切りと考え、外科医としての第一線を退く決断をしました。そして、これまでの経験を活かしながら、地域医療に貢献したいという思いから、開業の道を選んだのです。
私は千葉県の出身ですが、長野県内の基幹病院に長年勤務していたため、松本市には土地勘があり、なじみ深い場所でした。また、母校である信州大学の近くということもあり、近隣の病院と密に連携できる環境が整っていることも大きな魅力でした。こうした条件がそろっていたことから、この地で新たなスタートを切ることを決めました。
すでに30年以上にわたり地域医療に取り組まれてきたとのことですが、診療内容など開院当初と比べて変わった点はありますか?
この30年で大きく診療内容を変更したことはありません。開院当初から、風邪による鼻炎やのどの症状、花粉症などのアレルギー疾患、めまいといった一般的な耳鼻咽喉科の診療に加え、せきや胸やけ、窒息などに対応する気管食道科、さらに手術の経験を活かせる形成外科も標榜し、診療を行ってきました。常に地域の皆さまの健康に寄り添い、困りごとに親身になって対応する「ホームドクター」として、開業以来、一貫して地域医療に取り組んでまいりました。
貴院は、山荘を思わせる大きな三角屋根が印象的ですね。
「困ったときに気軽に立ち寄れる場所でありたい」という想いから、あえて病院らしくない外観にしました。院内も、リラックスして過ごしていただけるよう、アットホームな空間を意識しています。待合室にはちょっとしたキッズスペースを設け、お子さんが退屈しないよう本も用意しています。「病院」というよりも、近所の家を訪ねるような気持ちで気軽に来院していただけたら嬉しいですね。

