「人の役に立ちたい」という想いが医師の原点。肝胆膵を専門に幅広く診療してきたベテラン消化器内科医が、予防と治療の両方に取り組むクリニックの院長に就任
はじめに、山田先生が医師を志されたきっかけと、消化器内科を専門とされた理由をお聞かせください。

「将来は人の役に立つ仕事がしたい」——そんな思いを抱いたのは、子どもの頃からでした。本格的に医師を目指そうと決意したのは、小学校高学年の頃です。私自身、体があまり強くなく、病院にお世話になることが多かったこともあり、診察を受けるなかで医師という職業に自然と憧れを抱くようになりました。
ただ、私の育ったのは兵庫県の田舎町で、家族や親戚にも医療関係者はおらず、「どうすれば医師になれるのか」と手探りで進んでいくしかありませんでした。それでも、「人の役に立ちたい」という思いだけはずっと胸にあり、医師になった今も、「どうすればもっと患者さんの力になれるか」と自問自答しながら、日々の診療に取り組んでいます。
消化器内科を選んだのは、食道・胃・大腸といった消化管から、肝臓・膵臓・胆のうまで、多岐にわたる臓器を扱う診療科であることに魅力を感じたからです。診断から治療まで一貫して関わることができ、幅広い視野と深い専門性の両方が求められる点に、大きなやりがいを感じました。
貴院の院長に就任されるまでのご経歴を教えてください。
大阪大学医学部を卒業後、同大学医学部附属病院の第一内科(当時)に入局し、消化器内科を専攻しました。臨床研修を経て、東京の大学院に進学し、医学博士の学位を取得。その後、大阪に戻り、大阪ろうさい病院に勤務しました。
同院では、消化器内科部長として約20年にわたり、消化器がんや炎症性腸疾患をはじめとする重症例を中心に、消化器内科全般の診療に携わってきました。また、後進の指導・育成にも力を注ぎ、臨床と教育の両面で消化器医療に取り組んできた経緯があります。
山田先生は、消化器内科の中でも特に肝臓病の診療に注力されてきたと伺いました。
大阪ろうさい病院では、地域の基幹病院として消化器疾患全般に対応し、内視鏡検査を含む専門性の高い医療に携わってきました。なかでも、肝臓・胆のう・膵臓といった肝胆膵領域の診療に特に力を入れており、消化器病専門医、肝臓専門医・指導医の資格を取得し、専門的な視点での診療を行っていました。その後赴任した市立貝塚病院においても、消化器内科全般を診療する中で、とくに肝炎・肝硬変・肝がんなど、肝臓疾患に対する診療には継続して力を注いできました。
「肝臓は沈黙の臓器」ともいわれ、治療が難しい印象がありますが、肝臓病の医療はどのように進歩しているのでしょうか?
肝臓はダメージを受けても自覚症状が出にくいため、「沈黙の臓器」といわれますが、その診断・治療はこの数十年で大きく進化しています。
たとえばC型肝炎に対しては、近年、直接作用型抗ウイルス薬(DAAs)が登場し、治療によってウイルスを体内から排除できる確率は95%以上に達しています。短期間の内服治療で、ほとんどの患者さんが完治を目指せるようになりました。B型肝炎についても、完全にウイルスを排除することは難しいものの、ウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬の使用により、肝炎の進行や肝硬変・肝がんへの移行を大きく抑制できるようになっています。
一方で、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)や、その中でも肝炎や線維化を伴う非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は、現在も治療薬の開発が進められている段階です。現時点では、肥満・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病を適切に管理することが、肝炎の進行予防に直結します。特効薬こそまだありませんが、生活習慣の改善と併用しながら内科的にアプローチしていくことが、極めて重要な治療戦略となっています。
市立貝塚病院では副院長としてご活躍されていた山田先生が、貴院の院長に就任されたきっかけについてお聞かせください。
院長就任のお話をいただいたのは、私が所属している大学の医局からのご推薦がきっかけでした。これまで勤務してきた大阪ろうさい病院や市立貝塚病院は、いずれも南大阪に位置しており、地域の医療事情にもある程度通じているという点をご評価いただいたのかもしれません。

当院は、法定健診や特定健診、人間ドックなどの健診・検診体制を充実させ、同時に外来診療も行うクリニックです。地域医療の入口としての役割を担っており、病気の早期発見・早期治療を目指しながら、継続的な診療にも対応できる体制を整えています。今後も、これまでの経験を活かしながら、地域の皆さんの健康づくりに貢献していきたいと考えています。
女性スタッフが多く、院内に温かみがありますね。
私も入職して最初に驚いたのですが、当院は女性スタッフの割合が9割近くにのぼり、看護師、臨床検査技師、診療放射線技師、受付スタッフなどもほとんどが女性で構成されています。
そのためか、院内全体に自然とやわらかく温かな雰囲気が生まれていて、患者さんにとってもリラックスしやすい環境になっているのではないかと感じています。
