糖尿病の合併症リスクを最小限に抑えるため、食事療法からエビデンスに基づく最新治療まで、患者一人ひとりに合った治療を提供
現在のクリニックには、どんな患者さんが多く来院されますか。
当院を受診される方のうち、7割近くが糖尿病の患者さんです。飲み薬や食事によって血糖コントロールが可能な軽症の方もおられますが、半数以上はインスリン注射などの薬物療法が必要となる患者さんです。
糖尿病以外ですと、高血圧症や高脂血症などのいわゆる生活習慣病や、甲状腺など内分泌系の疾患で来院される患者さんが多いですし、もちろん、風邪やインフルエンザなど一般内科にも対応しております。
「花水木内科」の特長を教えてください。
やはり私の専門である糖尿病治療において、患者さんに合わせた適切な治療法を提案したり、その根拠の説明などをわかりやすくお伝えできることが、当院の強みだと思います。
糖尿病の本当の怖さは、糖尿病が進行して起こる様々な合併症にあります。「し・め・じ」という3大合併症の啓発キーワードがありますが、これは、神経の障害、目の障害、腎臓の障害のことで、これらを併発すると日常生活が難しくなることもあります。また他にも、合併症として動脈硬化が進むと、心臓、血管、脳へのダメージも深刻なものになっていきます。
当院は、糖尿病そのものやそうした合併症の進み具合を診断するための医療設備を揃えており、糖尿病の進行を防ぎ、重篤な合併症とならないための早期治療を主軸とした上で、患者さんの生活やお気持ちにも寄り添いながら、適切な治療法を提供しています。
糖尿病治療について詳しくお聞かせいただけますか。
近年、糖尿病のリスクを測定するのに優れているとされるのが、血液検査で得られる「HbA1c」(ヘモグロビンエーワンシー)と呼ばれる値です。当院では基本的にこのHbA1cの値の変化をよく観察しながら、患者さん一人ひとりに適切な治療法をご提案していますが、いずれの治療の場合も、その治療を選択した根拠や治療法ごとのメリット・デメリット、得られる効果などをしっかり説明し、ご納得いただいてから治療を開始しています。
具体的には、軽症の患者さんですと、まず食事の仕方や内容を検討することでHbA1cを目標値に抑えることを目指します。当院に在籍する管理栄養士と連携しながら食事療法を行い、1~2ヶ月ほど経っても改善の兆しがなかったみられない場合には、薬物療法を導入します。
通常、薬物療法は効き目の穏やかな内服薬から始めます。ただし、初診の段階でHbA1cが8.0~9%を超えるケースや、若年・壮年の方など早期に介入した方がいいと判断した場合には、インスリン注射などの強力な薬物療法を選択することもあります。
インスリン注射は糖尿病が悪化したときの最後の手段というイメージがありますが、現在の糖尿病治療では、以前よりもかなり早い段階からインスリン注射を始めることがあります。もちろんこれには根拠があって、海外の大規模な臨床研究で得られた「治療早期の段階で適切な血糖値に改善することで、5年後10年後の合併症発症リスクを有意に押さえ込むことができる」というデータが存在し、このエビデンスにより日本の糖尿病学会でも広く認知されてきているのです。
ほかにも、生活習慣の改善や内服薬だけでは血糖値をコントロールできないなど、患者さんの状態によっては「GLP-1(ジーエルピーワン)受容体作動薬」という薬物療法を提案することがあります。GLP-1は、もともと体内に存在するホルモンの1つで、食べ物が小腸に到達したときなど、血糖値が上がりそうになるとインスリンの分泌を促す役割を持ちます。体外からこのGLP-1を補う目的で使用するのですが、十分な血糖降下作用、体重減少の効果が得られて、かつ低血糖を起こしにくいというメリットがあります。
患者さん一人ひとりを丁寧に診察し、適切な治療法を提案したり、いくつかの治療法を組み合わせたりして、患者さんにとってもっとも効果が得られる治療法にアプローチするのが、糖尿病専門医である私の役割だと思っています。