“人の役に立ちたい”という思いが高じて、患者に親身に寄り添う精神科医に
はじめに、医師を志したきっかけをお聞かせください。
私は子どもの頃から、周囲の人たちを喜ばせたいとか、人の役に立ちたいという気持ちが強かったんです。そういった職業はさまざまありますが、特に医師に魅力を感じたのは、家族が病気になったときの体験が大きかったのかなと思います。家族の治療を担当してくれた医師にとても頼りがいを感じ、子ども心に「医師という職業は、人の役に立てる、やりがいのある職業だな」憧れのような気持ちも芽生えました。
その後、進路については紆余曲折ありながらも、最終的には初心に戻り医師になることを決めました。
精神科を専門にされた理由を教えてください。
医師免許取得後、研修医としていろいろな科目をローテーションして学ぶ中で、脳神経の分野にとても興味を感じました。
脳や神経そのものが侵される病気は、脳神経外科や脳神経内科などが直接患部を見ながら治療にあたります。それに対して精神科は、患者さんの生い立ちや生活環境など、患者さんが抱えている問題や背景を深く掘り下げながら問診し、目に見えない病気を明らかにしていきます。患者さんに寄り添いながら聴き出した内容を分析して、治療していくという診療プロセスに魅力を感じたことが、精神科を専門とした大きな理由です。
しかも、実際に治療にあたってみると、精神症状が改善していく患者さんも多くおられました。精神科の病気は、たしかに目には見えないけれども、治療がフィットすれば良くなっていくことを実感できたことも精神科医を選択した決め手になりましたね。
院長に就任されるまでのご経歴をお聞かせください。
順天堂大学医学部附属浦安病院で2年間研修を積んだ後、昭和大学の精神科医局に入局し、岩波 明先生(現昭和大学医学部精神医学講座主任教授・昭和大学附属烏山病院院長)のご指導のもとで研鑽を積みました。岩波 明先生は、精神生理学※を専門とし、うつ病や統合失調症など幅広い精神疾患を深く探究されてきた方です。現在は、成人の発達障害の研究や治療に重点的に取り組まれ、執筆された本が多数ベストセラーにもなっています。
その岩波先生のもとで、統合失調症、うつ病、躁うつ病、認知症、神経症などの精神疾患を幅広く診療し、発達障害関連で学位取得後は、成人の発達障害の専門外来を受け持って診療に取り組んできました。
その後は、昭和大学に籍を置きながら、一年間、地域の訪問診療に携わり、精神疾患だけでなく内科的な疾患も幅広く診療し、知見を深めてきました。
恩師の岩波 明先生と当院の前院長とは旧知の間柄と伺っていまして、そのご縁と、もともと当院には昭和大学の医師が派遣で勤務しているというつながりもあり、2021年5月、前院長から当院を継承させていただきました。
※精神生理学:人間の行動の心理的機能と生理機能の関係を研究する学問