耳鼻咽喉科専門医として一般的な疾患から救急症例まで多様な臨床経験を積む。小さい頃から慣れ親しんだ地域に恩返ししたいと開業
はじめに、先生が医師を志したきっかけをお聞かせください。

医師を志したきっかけは、幼い頃から身近で父の姿を見て育ったことにあります。父は内科の開業医として、地域の方々に親身に寄り添う診療を続けていました。そんな父の背中を見ながら、「人の健康を支える仕事は素晴らしい」と自然に思うようになっていました。
とはいえ、父から医師になるよう勧められたことは一度もありません。診療科の選択を含め、常に私の意志を尊重してくれました。自分自身でじっくりと考えた末に医師の道を選び、埼玉医科大学へ進学しました。
大学卒業後は埼玉医科大学総合医療センターの耳鼻咽喉科に入局されました。数ある診療科の中で、耳鼻咽喉科を選ばれた理由をお聞かせください。
学生時代は、レースやラリーなどの自動車競技を行うサークルに所属していました。そこで出会ったOBの一人が耳鼻咽喉科の先生で、耳鼻咽喉科は外科的な手技と内科的な判断の両方が求められる、とても奥深い分野であることを伺い、強く惹かれるようになったんです。ちょうどその先生が講師を務めていた埼玉医科大学総合医療センターの耳鼻咽喉科に入局し、本格的に専門の道へ進むことを決めました。
総合医療センターの耳鼻咽喉科で医業に邁進されたとのことですが、この間、主に診てこられた疾患や症例について教えてください。
耳鼻咽喉科は、耳・鼻・のどを中心に、喉頭や気管、さらには食道の入り口といった領域まで幅広く診療を行う科です。私も在籍中は、中耳炎や難聴といった耳の疾患、アレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎など鼻の疾患、扁桃炎などのどの疾患まで、耳鼻咽喉科の一般的な疾患を全般的に診療していました。
一方で、耳鼻咽喉科には慢性的な疾患だけでなく、緊急対応を要する症例も少なくありません。たとえば、細菌感染によって気管の入り口にある喉頭蓋が腫れる急性喉頭蓋炎や、首の奥に膿がたまる深頚部膿瘍などは、重症化すると呼吸困難を起こし命に関わることもあります。そのような緊急疾患にも対応していました。
また、外傷性の症例を扱うこともあり、歯ブラシがのどの奥に刺さってしまった方など、日常では想定しにくいケースに遭遇することもありました。総合医療センターは県内でも有数の大規模病院であり、高度救命救急センターも併設されていたため、救急症例を含め多種多様な患者さんが来院されていました。そのような環境のなかでさまざまな臨床経験を積み、耳鼻咽喉科専門医としての礎を築くことができました。
そして2008年に貴院「おおの耳鼻咽喉科クリニック」を開業されました。開業を決心された想いをお聞かせください。
総合医療センターでの診療は、医局の仲間や他科の先生方と連携しながら、重症例を含む多様な患者さんの治療にあたる、非常にやりがいのある環境でした。ただその一方で、医師としてのこれからを考えたときに、「もっと身近な場所で、一人ひとりの患者さんとじっくり向き合いたい」という思いが強くなっていきました。自分の手で診療のすべてを担い、地域の“かかりつけ医”として支えていく医療を実践したい――そんな気持ちが開業を決めたきっかけです。
私は北区王子で生まれ育ち、父も王子で内科医院を開業していました。高校も当院の近くに通っていましたので、この板橋の地域は昔からなじみのある場所です。子どもの頃から親しんできたこの土地で、地域の皆さんの健康を支えながら恩返しができればと思い、この地で開業することを決めました。

