患者さんの負担が大きい脳血管疾患。「治療だけでなく予防にも注力したい」との思いから開業へ
はじめに、先生が医師を志したきっかけをお聞かせいただけますか?
私の祖父は医師で、戦争の時代を医師として生きた人でした。その話を祖父から聞き、感銘を受けたことが出発点になっています。また、私の父も医師で整形外科を開業しており、小さい頃から医師というあり方を身近に感じていました。そうした影響を受けて、広島大学医学部に進みました。
大学卒業後のご経歴を教えてください。
国立国際医療センター(現・国立国際医療研究センター病院)で初期研修・後期研修を受け、最終的に脳神経外科を専攻しました。もともと外科系に進みたいという思いがあったのですが、研修医としてさまざまな科をローテーションして研鑽を積む中で、一番必要とされていると感じたのが脳神経外科だったんですね。
その後、宮城県立こども病院や横浜新都市脳神経外科病院の脳神経外科に赴任し、脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)や頭部外傷などの急性期疾患を中心に、多くの臨床経験を積んできました。
どのような経緯で開業をお考えになったのでしょうか?
脳の疾患は、働き盛りで元気に過ごしていた方がある日突然倒れてしまうことも珍しくなく、突然やってきた「事故」のように感じる患者さんも多いと思います。そして発症すると、患者さんやご家族にはさまざまな負担が大きくかかってしまいます。でも、脳卒中などの疾患はある日突然生まれたのではなく、何らかの原因によって少しずつその状態に向かっていったものであり、予防してリスクを下げることは十分可能なのです。
たとえば、脳卒中の主な原因の一つは高血圧で、生活習慣の乱れなどによって高血圧になると、脳卒中を引き起こすリスクが高まります。その結果、脳の血管が詰まってしまうと「脳梗塞」、血管が破れてしまうと「脳出血」や「くも膜下出血」の発症に繋がります。そうなる前に、生活習慣の改善などによって高血圧を予防すれば、脳卒中の発症リスクを下げることができます。反対に、起こってしまった脳卒中を手術で治療しても、おおもとの原因となった生活習慣を改善しなければ再発してしまうかもしれません。
私は脳神経外科の医師として、発症した患者さんを手術で治療することにやりがいを感じていました。でも同時に、「本当の意味で患者さんの健康に貢献するためには、発症後に治療する医療だけでなく、発症前に予防する医療にも注力すべきではないだろうか」という思いも強くするようになったんです。それを実践する方法として、開業という道を考えるようになりました。
そして2011年7月、前院長から承継するかたちで相武台脳神経外科の院長に就任されました。
2011年は大きな地震が立て続けに起こり、2月のニュージーランド地震では同じ病院に勤めていた看護師さんが研修先で亡くなってしまいました。その翌月には東日本大震災が起こり、宮城の勤務医時代によく利用していた仙台空港が浸水被害を受けた様子などを目にしました。そういう状況で、「したいことがあるなら、今しておくべきではないか」と考えるようになったちょうどその頃、こちらのご縁をいただき、承継することを決めました。