挫折を越えてたどり着いた今、支える医療を届けたいという想い
そして今は、地域のクリニックで診療をされているのですね。

そうこうしているうちに、さいたま赤十字病院には結果的に10年ほど勤務することになりました。その頃、友人の親御さんが運営していたクリニックを継がないかというお話をいただきました。循環器を専門にやってきた経験を活かしつつ、より地域に根ざした医療をしたいと思っていたタイミングだったので、お受けすることにしました。地域に根ざした医療を実践するには、自分自身の責任で“場”を持つ必要がある。そう感じていた頃だったので、まさに運命的なタイミングでした。
コロナ禍では、大変なご苦労もあったと聞きました。
そうですね。当時は誰にとっても先が見えない状況で、医療機関も混乱していました。その中で、診療を止めることなく続けるというのは、簡単なことではありませんでした。僕たちのクリニックでも、町内会や近隣の方々と協力しながら、ワクチン接種を地道に進めたり、発熱外来の体制を整えたりして、できる範囲で地域のニーズに応えていきました。手探りの中でしたが、患者さんから「助かった」「安心した」といった言葉をいただくこともあり、あらためて診療所の役割の大きさを実感しました。振り返れば、この経験を通じて、地域に根ざした診療所としての意識と対応力が自然と育っていったように思います。完璧ではなかったかもしれませんが、自分たちなりに地域医療の一端を担えたことは、ささやかながらも誇りに思っています。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

正直に言えば、僕は順風満帆な道を歩んできた医者ではありません。挫折もしたし、悩んで立ち止まることも何度もありました。それでも、支えてくれた人たちに背中を押されて、ここまで医師として歩いてこられました。だからこそ、今度は僕が、誰かを支える番だと思っています。体のことでも、心のことでも、何か一つでも気になることがあれば、ぜひ聞かせてください。医療は、最新の技術や知識だけでは完結しません。そこに“あなたの声”が加わって、初めて“医療”になります。だからこそ、まずは気軽に、あなたの言葉で話しかけてください。あなたの人生に少しでも力になれるよう、ここでお待ちしています。