がん治療を究めたいとの想いから外科の道へ。地域の乳腺専門クリニックで治療技術を磨き開業
はじめに、医師を志したきっかけをお聞かせください。

私は理系大学への進学を目指していたのですが浪人しまして、ひょんなことから予備校の医学部コースに通うことになりました。そこで学ぶうちに、人を助ける医師という仕事は自分にとって生きがいとなるものではないかと、強く関心をもつようになったのです。大学は京都府立医科大学に進学し、卒業後は同大学の第一外科(当時)に入局しました。
さまざまな科があるなかで、どのような理由から外科を専攻されたのでしょうか?
学生時代からがんの治療に携わりたいという想いがありました。がんについて、現在ではさまざまな治療法がありますが、当時は手術による外科治療が主要な治療法とされており、手術を受けて元気になる患者さんをたくさん見てきました。そういうなかで、私も外科に進んでがん治療を究め、患者さんのために尽くしたいと考えたのです。
京都府立医科大学と、その後勤められた京都第二赤十字病院では、消化器・一般外科、呼吸器外科、乳腺外科などで臨床に携わられました。この間、どのような疾患を診てこられましたか?
大半の期間は消化器・一般外科で、胃がん、大腸がん、食道がんといったがん疾患を中心に消化器系の病気を担当しました。呼吸器外科では肺がん、乳腺外科では乳がんの手術治療にも携わっています。先ほどお話ししたように、私が医師になった当初はがん治療といえば開腹手術が中心でしたが、医師3年目のときに初めて日本に腹腔鏡手術が導入され、私が在籍していた京都第二赤十字病院でも先駆けて行うようになりました。ですので、従来の開腹手術と合わせて腹腔鏡手術についても学び経験を積むことができました。
そのあとは、滋賀県の国保蒲生町病院(現・東近江市蒲生医療センター)の外科医長として6年間、京都府のほうゆう病院(現・宇治リハビリテーション病院)の外科部長として8年間勤務し、のべ20年間で約1400例の消化器・一般外科手術を執刀し、研鑽を重ねました。
2008年には加藤乳腺クリニックに移籍され、外科部長、院長と要職を担われました。
加藤乳腺クリニックは2003年に滋賀県初の乳腺専門クリニックとして開業、乳がんをはじめとする乳腺疾患の診療に積極的に取り組んでいる医療機関です。こちらの院長が大学の同級生で、多くの患者さんを治療するためぜひ手伝ってほしいと誘いを受けたんです。
同院の大きな特徴は、地域のクリニックでありながら入院・手術設備を備えており、外科手術も含めた乳がん治療に対応していること。最新の治療技術を取り入れた乳がんの手術症例数は近畿でもトップクラスで、術後のフォローや再発症例などの診療経験も豊富でした。そうした環境に身を置き、乳腺疾患の治療技術を磨くことができればと移籍することを決めました。実際、在籍していた15年間で約1300例の乳がん手術を執刀して手技を磨いたほか、保険適応となる前から多数の乳房再建手術や、形成手術などを行い、さまざまな症例の乳腺疾患を数多く診療し、多くの学びを得ることができました。
そして2023年5月、貴院を開業されました。開業を決心するに至った想いをお聞かせいただけますか?
昨今、定年を迎えた方が新たなビジネスを始めることも珍しくありません。私も節目の年齢にさしかかり、これからの人生を考えたときに、乳腺疾患の治療を通じて地域医療に貢献するという道を考えるようになりました。私は神奈川県出身ですが、大学入学以来多くの時間をこの京都で過ごしてきました。長年親しんできたこの地域の医療に、医師としてのこれからの人生を投じたいと開業を決意しました。

