大学病院で30年以上の経験を積んだ消化器外科医が、地域の多様なニーズに応えるクリニックを開業
はじめに、医師を志したきっかけと、外科を専門とされた理由をお聞かせください。

高校生の頃に進路を考えたときに漠然と「人のために役立つ仕事がしたい」と思ったのが出発点です。プロフェッショナルとして、自分にしかできないことを提供し、なおかつ人に喜んでもらえるという点に大きな魅力を感じ、医師の道を選びました。
富山医科薬科大学医学部(現・富山大学)を卒業後、千葉大学の第二外科(現・先端応用外科)に入局しました。もともと周囲から「手先が器用」と言われることが多く、自分でも内科より外科のほうが自分の能力を活かせるのではないかと感じたんです。
これまでのご経歴と、携わってこられた主な疾患や症例について教えてください。
千葉大学病院で研修を行った後、船橋市立医療センターや千葉県内の関連病院に勤務し、消化器外科を中心に診療に携わってきました。大学院では医学博士号を取得し、研究活動と並行しながら臨床経験を積み重ねました。特に胃がん・大腸がんといった消化器がんや、肝胆膵領域の高難度手術を数多く手がけ、診断から手術、術後管理、外来フォローまで一貫して担当していました。あわせて、取得が難しい肝胆膵外科高度技能指導医の資格も取得しています。
当時は開腹手術が主流でしたが、次第に腹腔鏡手術が導入されるようになり、外科治療の大きな変革を肌で感じましたね。急性虫垂炎や腸閉塞などの緊急症例にも数多く対応し、外科医としての経験を積み重ねました。
ロンドンでの診療経験もあると伺いました。
はい。ロンドンの日系クリニックで4年間、子どもから大人まで年齢を問わず幅広い患者さんの診療に携わった経験があります。現地では日本企業の駐在員の健康診断を中心に、内科、外科、婦人科、小児科といった多岐に渡る一般診療に対応しました。さらに週に1〜2回は現地の病院で研修を受ける機会があり、イギリスの医療現場や制度の違いを直接体験できました。文化も制度も異なる環境での医療活動は、医師としての柔軟性や対応力を磨く貴重な経験だったと思います。現在、地域医療や家庭医的な役割を担う上でも大きな財産になっています。
先生が、開業を決意された理由をお聞かせください。
帰国後、2004年からは帝京大学ちば総合医療センターに勤務し、2017年からは光学診療部(内視鏡検査を担当する部署)の病院教授として、胆管結石の摘出や消化器がんの切除など難易度の高い内視鏡治療にも力を尽くしました。教授の役割は手術や診療にとどまらず、若手医師の教育や研究活動の推進も含まれます。学会発表や論文執筆を通じて国内外の医療に貢献しながら、次世代を育成する責任も担いました。
65歳で定年を迎えた後も、そのまま大学で非常勤医師として大学に残る選択肢もありましたが、「これまで培ってきた知識、技術、経験を、より主体的に地域の方々に還元したい」という思いが募り、開業という道を選びました。
