内視鏡検査のハードルを下げ、病気の早期発見・早期治療の大切さを伝えたい
便秘外来にも力を入れていると伺いました。

はい。じつは、私自身が子どもの頃から便秘でつらい思いをしてきた経験があるのですが、正しい知識と適切な対処法を学ぶことで、現在では問題なく過ごせています。便秘は軽視されがちですが、単なる不快な症状ではなく、強くいきむことで血圧が急上昇し、脳出血などの重大な疾患を引き起こす要因にもなります。
当院の便秘外来では、診療時間を長めに確保し、生活習慣や食事内容、ストレスの影響などを詳しくお聞きしています。患者さんのなかには、便秘薬に対して「クセになるのでは?」「お腹が痛くなりそうで怖い」という思いから使用を控え、苦しんでいらっしゃる方も多いです。また、自己流の便秘薬の使用が、かえって症状を悪化させてしまう場合もあります。お薬にもさまざまな種類があり、適切に使用すれば症状が改善し、快適に過ごすことができますので、「たかが便秘」と思わず早めにご相談いただきたいと思います。
先生が日々の診療で心がけていることを教えてください。
患者さん一人ひとりの診療時間をしっかり確保するように心がけています。患者さんはつらい症状を抱えていたり、忙しいなか当院を受診してくださるので、体の状態はもちろん、生活背景やどのような考えを持っているのかなどにもじっくりと伺うようにしています。
また、治療ではどのような選択肢があるのかをお伝えすることも意識しています。例えば、「この治療で十分な改善が得られなかった場合は、次にこういった方法があります」と、先の見通しを示すことも重要です。特に胃腸の症状は複雑で、すぐに改善しないケースも少なくありません。治療の流れを事前に共有することで、患者さんの不安を軽減し、治療を継続していただけるように努めています。
お忙しい日々と思いますが、プライベートではどのように過ごされていますか?
子どもの頃からパンが大好きで、今ではパン屋さん巡りが一番の趣味になっています。東京はおいしいパン屋さんがたくさんあるので、写真を撮ってInstagramで紹介していたら、いつの間にかフォロワーが2万人を超えていました。最近はグルメ雑誌に寄稿したり、SNSを通じてパン仲間ができたり、患者さんやスタッフとパンの話題で盛り上がることもあります。診療では真剣勝負の毎日ですが、おいしいパンを探して街を歩く時間が至福のひとときであり、リフレッシュになっています。
今後の展望についてお聞かせください。
一つは、当院に来ていただいた患者さん一人ひとりに「ここで検査を受けてよかった」と思っていただけるような、質の高い内視鏡検査を提供し続けること。もう一つは、より多くの人に向けて、内視鏡検査の大切さを発信していくことです。
じつは、私の母は「友達がつらいと言っていた」という理由で、長年内視鏡検査を拒んでいたんです。内視鏡専門医の私や父がどんなに説明してもダメで、リアルな口コミの影響力を痛感する出来事でした。だからこそ、当院で検査を受けた方に「想像していたよりも楽だった」と感じいただくことが重要だと考えています。その経験がリアルな口コミとなり、当院で内視鏡検査を受けていただく方が増えたり、検査のハードルを下げることにつながればと思っています。
また、YouTubeやInstagramなどのSNSを活用して、内視鏡検査を受けるきっかけになるような情報発信にも力を入れています。健康意識の高い人だけでなく、これまで検査に縁のなかった人にも届くように、わかりやすく親しみやすい情報を届けていきたいと思っています。
さいごに、読者へメッセージをお願いします。

内視鏡検査は、胃がんや大腸がんといった消化器のがんや、がんになる前段階である大腸ポリープなどの早期発見・早期治療にとても有効です。近年は内視鏡検査・治療の進歩によって、早期に発見できればほとんどが完治できます。それでも大腸がんの患者数が増えているのは、「検査を受けない人が多いから」なのです。
当院では、がんを「いつか罹るかもしれない未来のリスク」と考えるのではなく、「今、予防できる病気」と捉えて、一人でも多くの方に内視鏡検査を受けていただきたいと思っています。これまで内視鏡専門医として培った技術と経験を活かし、検査が怖い・つらいと思われていた方の「最後の砦」として、苦痛の少ない検査を安心して受けていただけるように尽力してまいります。
また、便秘や痔などは受診をためらう方もいらっしゃいますが、そのままにしておくと症状が進行して重症化したり生活に支障が出たりします。当院はプライバシーに配慮し、女性も受診しやすい診療環境を整えていますのでお気軽にご相談ください。これからも皆さんの健やかな未来のために、スタッフ一同、全力でサポートいたします。